• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

記事

その公約、実現できる? 実現可能性をチェック

2017年4月20日 紙面から

写真

 二十三日投開票の名古屋市長選は、現職と、補佐役だった前副市長による事実上の一騎打ちだ。市民税5%減税や名古屋城天守閣の木造復元など、現市政の継続課題に目を奪われるが、他にも双方の行政運営の経験に基づく公約も盛りだくさん。とかく選挙といえば、候補者は有権者を振り向かせようと風呂敷を広げがち。そこで、公約の実現可能性をチェックしてみた。

 現職の河村たかしさん(68)が、特に力を込めるのが「日本一子どもを応援する街ナゴヤにする」。いじめや不登校に対応する常勤スクールカウンセラー(SC)らを、すべての小中学校計三百七十一校に配置するという公約を、目玉の一つに掲げる。常勤SCの配置は二〇一四年度に十一の中学校で始め、四年目の本年度は五十八校に拡大した。

 難題は、SCの確保だ。一七年度は定員二十人に対し、当初十八人しか決まらず追加募集となった。SCは現在、地元だけで確保できず、東海三県以外出身者が定員の四割を占める。

 「電通の過労死自殺もあり、企業や福祉施設での需要が増えている。経験を積んだ人材を三百人も集めるのは至難の業だろう」と日本臨床心理士会の関係者。さらに、小中学校への完全配置には、人件費だけで新たに二十五億円ほどかかるという。

 前副市長の岩城正光(まさてる)さん(62)も、児童虐待を専門とする弁護士だけに子どもの福祉に熱心。「小学校の給食費無償化の実現」を訴える。市内小学生の給食費は一人月三千八百円、小学生十一万一千人分は約四十五億円となり、これを市が負担する計算だ。「無料の給食を、高校中退の若者や一人暮らしのお年寄りも食べられるようにしたい」と踏み込んだ発言も飛び出す。

 文部科学省によると「給食を少し余分に作り、提供する程度ならば可能」だが、市教委は「異物混入や食中毒が起きるリスクがある」と慎重。夕方などに給食施設を使って調理、提供するのは文科省、市教委とも「設備の消毒にかかる時間や、職員の確保など課題は多い」と口をそろえる。

 二人が共通して掲げる「敬老パス」の利用対象を、市バス・地下鉄から拡充する計画も一筋縄にはいかない。システム改修をはじめ、費用負担の調整や需要予測の調査が欠かせない。実現には、現行六十五歳以上の対象年齢や、個人負担金の引き上げを含む抜本的な見直しが迫られる可能性もある。

 二人の公約集を見比べた愛知大地域政策学部の野田遊教授(行政学)は「問うべき名古屋市の課題の分析が十分でなく、各施策の実施期間や、成果を評価する指標も示されていない」と指摘する。有権者は、“空約束”にならないかの見極めも求められる。

 (市長選取材班)

最新記事

記事一覧

なごや市長選新聞 なごや市長選新聞
新聞購読のご案内