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<有力2候補に密着>(上) 河村たかしさん(68)

2017年4月20日 紙面から

 名古屋市長選は二十三日の投開票日まで、あと三日。残された時間に、一人でも多くの有権者に訴えを届けようと、候補者は全力で駆け回る。ラストスパートに入った有力二候補の姿を追った。

 「河村さんでないと、昔の停滞する名古屋に戻りますよー」

 十九日午前八時すぎ。西区の上小田井駅前で、通勤や通学の市民に語り掛ける。今、市政の舞台から自分が退場したらどうなるか? 「市長も、議員も、公務員も、ようけ給料をもらうようになるってこと。私が市長になる前は、公務員は幸せだったんですから」

 今回の選挙で問われている河村市政の「刷新」か「継続」か。「刷新」は昔へ後戻り、「継続」は改革の前進というわけだ。

 何が庶民受けするのか、誰よりも熟知し、二期八年をアピールしてみせる。市長給与の大幅カットと退職金の廃止をきっかけに、公務員給与や市議報酬の削減に手を付けた。二〇一二年度から続く市民税5%減税も「(年)三千円でも五千円でも、えらいことですよ」。

 前の晩。夜の演説後に栄の居酒屋に繰り出し、焼酎と串揚げで疲れを癒やした。「いつもより長めの六時間睡眠です」。この日は午前中から演説トーンも全開。こと名古屋城天守閣の木造復元となると、目の色を変える。

 関連予算に賛成した主要会派が、そろって「ストップ木造化」を訴える対抗馬を支援しているのに我慢ならない。「市民をばかにしとる。自分たちの報酬も増やしといて、何のために議員をやっとるの」。すっかり日焼けした顔がこわばり、マイクを握る手にも力が入る。「税金で食っとる大連合軍との戦いだ」と息巻いた。

 ただ、ユーモアは忘れない。野菜や魚などの店が並ぶ中村区の豊国神社前の「九の市」。徒歩なのに、おなじみとなった自転車用ヘルメットをかぶって現れると、買い物袋を提げたお年寄りたちに「How are you?(ご機嫌いかが)」「おかあちゃん、ありがとう」と声を掛け続ける。大好きな「昔のお嬢さん」たちとの会話を楽しみ、満面の笑みだ。

 西区の浄心交差点前での演説中には、優しさものぞかせた。近づいてきたのは、一人暮らしの七十代の男性。「脳梗塞を発症し、通報が遅れたため足が不自由になった」とつぶやいた。演説を忘れ、しばらく黙考。隣に立つ市議と顔を見合わせ「ひもで引っ張り、一一九番通報するとかできんか」。アイデアマンらしさを見せた。

 どこへ行っても「河村さん頑張って」と声が飛び、次々とスマートフォンで記念撮影を求められる。年齢による衰えはみじんも見せず、自信たっぷり。「やっぱり、前回よりもええですわ」

 (市長選取材班)

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