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2017年4月14日 紙面から
二百三十万人が暮らし、南海トラフ巨大地震への備えが必要な名古屋市。市長選でも、現職の河村たかしさん(68)と前副市長で新人の岩城正光(まさてる)さん(62)が公約に防災対策を盛り込んでいるが、論戦の盛り上がりはいまひとつだ。
「高層ビルが立ち並ぶようになったが、防災対策はほとんど手付かずです」
十七日に全面開業するJRゲートタワーなど再開発が盛んな名古屋駅前で、声を張り上げた岩城さん。公約で、災害時に帰宅困難者を受け入れる駅周辺の防災公園の整備を提案。避難所となる小中学校の上下水道管の耐震化なども盛り込んだ。
ただ、大半は市がすでに計画、着手している施策の列挙にとどまる。演説場所によっては触れないことも。名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫教授は「『減災日本一』とうたっているが、具体像が見えてこない。もっと夢を持って、豊かな発想で防災を語ってほしい」と注文する。
一方、河村さんが街頭演説で触れる防災は、木造で建て替える名古屋城天守閣に終始。「(コンクリート製の今の城は)震度6強で倒壊の危険性が高い」と意義を繰り返す。液状化や津波の被害が想定される市南部での演説予定は少ない。
選挙公約集の掲載順と優先順位は関係ないが、防災は最終ページ。熊本地震と同じ直下型だった一八九一年の濃尾地震を教訓に、川や崖など地形に沿って分けられた旧町内会単位の防災対策を訴える。福和教授は「受け皿となる組織はないが、視点は大事」としつつ「地域を守るために何が必要で予算がいくらかかるのか、俯瞰(ふかん)的に見ていない」と指摘する。
三月末時点で、名古屋市内には熊本地震で被災した二十一世帯四十四人が避難中。熊谷直さん(86)は最も被害が大きかった熊本県益城町の隣、御船町から娘の住む名古屋市に身を寄せた。自宅周辺は耐震住宅も液状化で倒壊。町役場は機能せず、ひび割れた道路の復旧や、鉄骨ごと倒れたブロック塀の撤去は住民が協力し合った。「大災害の際、行政は市民を助けられない」と実感したという。
被災者の一人として「住民同士の連携を今から考えてほしい」と願う。「せっかくの機会。日ごろの備えを考えるきっかけになればいいですね」
(市長選取材班)