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<庶民革命は今>(1) 予算削減、荒れる公園

2017年3月28日 紙面から

市民税減税が始まる前には、花々に彩られていた公園の花壇=南区で

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 名古屋市の河村たかし市長の二期目の任期が、二十七日で残り一カ月となった。市民目線の政治、いわゆる「庶民革命」を唱えて市政の舞台にさっそうと登場し、ときに市民を熱狂に誘い、議会との対立を繰り返した八年。四月九日の市長選告示まで十日余に迫る中、その「革命」の軌跡や現場の今をみる。まずは金看板「三大公約」の一つ、市民税減税から−。

 「こんなもんでは刺し身を食べられる日が月一回、増えるくらい。日本酒も買えない」

 元会社員の佐藤英明さん(75)=南区=は、市民税減税額が記された納税通知書に目をやり、苦笑いした。年間八千四百円、月にすると七百円のすずめの涙。妻(73)と二人暮らしで、年金のほか駐車場収入もあるが、食費や光熱費、それに医療費もかかり、老い先の不安は大きい。

 「税金が戻ってくるといっても、こんなくらいなら。それなら、あの殺風景を何とかしてほしい」。毎朝、ラジオ体操で訪れる道徳公園の花壇の惨状を嘆く。

 かつては、白や黄色の花々が揺れていた。市が業者に委託して四季の花を植え、肥料や水やりが行き届いていた。今は茎だけになったスイセンが横たわり、雑草に覆い尽くされている。

 市民税減税が始まった二〇一〇年度。市はその財源の百六十億円を、行財政改革で捻出する予算を編成した。

 公園を所管する緑政土木局には、前年度から三十億円カットが割り当てられた。公園花壇に関連する一億円余の予算は三分の一以下に。百一カ所あった花壇の半数以上、五十八カ所が廃止された。「遊具の安全確保を優先すると、花壇を減らすしかなかった」(担当者)。清掃や除草の予算も縮減対象になり「雑草だらけだ」「ごみで汚い」といった通報や発見が市民税減税以前に比べ、一・四倍、二千件余寄せられた。減らされた予算はそのままだ。

 庶民の年貢を一円でも安くし、その財源をつくるための行財政改革の原動力にもなる。税金が少なければ企業も集まり、究極的には、減税分を社会貢献のためにと寄付する文化が社会に根づく−。河村市長が描いた減税政策の理想は、一石四鳥のはずだった。

 だが、5%の一律減税は、納税義務のない低所得者に恩恵は皆無。一五年度、個人市民税を納めた百十万人のうち、半数程度の五十九万人の減税額も年五千円に満たない。その総額十三億円は、個人市民税の減税額全体の八十二億円の二割弱。つまり、所得が低いほど減税の恩恵は届かない。半面、年四百万円近く減税された高額納税者もいる。

納税通知書に記された70代夫婦の市民税の減税額。月額に直すと700円

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 企業誘致や寄付文化の醸成に結び付いたのか、効果は見えにくい。一五年度に産業立地関連の補助金を活用し、市内に進出した六社に理由を尋ねたところ、「減税」を挙げたのは一社だけ。企業にとって、減税額を上回る営業利益を見込めなければ進出の意味はない。

 「税を効果的に再分配する行政の機能の放棄。もう減税は限界だ」。市議会二月定例会で集中砲火を浴びたが、新年度も百十七億円が振り向けられる。

◆河村市長ひと言「名古屋経済伸びてます」

 庶民にとって、収入のほとんどは生活費でなくなる。税金は少しでも安い方がいいんです。どんどん増税して、福祉に充てた方がいいんですか? 

 名古屋は五大都市(横浜、名古屋、京都、大阪、神戸)で一番経済が伸びてますが、減税の効果でしょう。わずかでも庶民の可処分所得が増え、それが景気を回復させ、税収を増やすことになる。それで福祉も向上する。

 土木などの予算は日本中減ってますよ。減税をテコに企業誘致が大きくブレークするにはもうちょっと時間がかかる。寄付もお願いしているが、理想は一歩一歩近づけていくよりしょうがない。

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