静岡

伊豆の市町縮む議会「もう限界」

2015年4月18日

◆募る危機感 低報酬 若手敬遠 減る定数

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 統一地方選の後半戦で、議員数が定数削減により一桁になる町がある。なり手不足で定数削減幅が増えた市や、高齢議員ばかりの町も。人口減と高齢化が進む伊豆半島の今を映す市町議会の姿だ。議員からは「議会機能を果たせる限界」と悲壮な声も聞かれる。

 半島南西部の松崎町は、人口七千二百人と県内市町で最も少ない。二十〜三十九歳の女性が二〇四〇年までに半減するとされる「消滅可能性都市」の一つだ。

 一三年九月、町議会に二つの条例改正案が出た。月額十八万七千円の議員報酬を15%削って十五万九千円にするか、定数を二つ減らして「八」にするか。どちらも経済低迷による税収減を予想した対策だったが、議会は真っ二つに割れた。

 報酬減を提案した議員は「基幹産業の観光が低迷し町民は苦しんでいる。議会は痛みを分かち合うべきだ」と訴えた。多様な意見が必要だとの考えから定数は維持するべきだとした。

 定数削減を主張した議員は「月額十五万円台の報酬で子育てはできない。若者の挑戦の規制につながり、年金生活者ばかりの議会になる」として、報酬は下げるべきではないとした。

 議長をのぞく九人の議員の意見は拮抗(きっこう)し、五対四で定数削減の条例が通った。

 「本当は現状維持が良かったが、町民からも削減へプレッシャーがあった」。そう振り返る議員は一桁定数への不安も口にする。「議員四人を味方にすれば町は何でも通せる。八人が限界。これ以上減ると議会は機能をなさなくなる」

   ×   ×  

 住民を代表して予算を審議し、行政をただす役割の議会。人口減や産業衰退、有権者からの要請などの要因が絡み、県内の市町議会は定数を減らしてきた。

 四十年前と比べた削減率は下田市が七割、熱海市と松崎町は五割に上る。狭き門に挑む候補者も減り、有権者の選択肢は少なくなった。世代バランスが偏ってしまった議会もある。松崎町は前回の当選者の九割が六十歳以上だった。

 東伊豆町に五十歳未満の現職議員はいない。月の報酬は十六万八千円と県内最低だ。年間報酬は期末手当込みでも二百六十八万円。報酬(月八十二万五千円)と政務活動費(月四十五万円)を受けられる県議の二カ月分ほどしかない。

 低報酬の影響もあるのか若手が名乗り出ず、二十八歳で初当選してから七期の町議は二十四年間、ずっと最年少議員だった。「地域経済の活力が落ち現役世代は自分の生活で手いっぱい。若者や女性も含めたバランスが必要だと思う」と表情は複雑だ。

 なり手不足は定数議論にも影響する。二月に定数を二減の一五に決めた熱海市議会は、削減幅をめぐり会派調整が難航。議長が、出馬動向を探った上で「一減では無投票になりかねない」と二減を示し、定数の条例改正案は可決した。告示直前の今も出馬表明は十六人で、一減なら無投票は現実化しかねなかった。

 三月に一減を決めた下田市議会も、新人の出馬表明が鈍かった昨年冬までは二減の方向だった。今年に入り新人の動きが活発化し、「『二減なら賛同しない』という声が強まった」(議員)ため一減に決まった。

(斉藤明彦)