静岡

市長選を前に富士宮市政の課題<下>

2015年4月17日

◆医師不足の市立病院 医師確保策に隔たり

1階ロビーに掲げられている自治体立優良病院の表彰状=富士宮市立病院で

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 富士宮市立病院の正面玄関を入ってすぐ、患者らが行き交う一階ロビーに一枚の表彰状が飾ってある。「自治体立優良病院として表彰します」。十二年連続で経常収支の黒字を計上するなど経営努力が認められ、二〇〇六年に国から受けた。

 大畑宏之事務部長(58)は「健全財政の要因は当時の院長を中心とした経費削減の徹底と浜松医科大の協力のおかげだった」と話す。市立病院は一九八六年に新施設・新体制でスタートし、常勤医のほぼ全員を浜医大の派遣に頼ってきた。

 ところがこの数年、浜医大は医局の人員不足を理由に派遣打ち切りを続けている。二〇一二年には常勤医三人体制の麻酔科が一人に、昨年には三人体制の小児科が二人になった。二つの診療科は一五年に昼間勤務の医師が一人ずつ増員になったが、夜間救急の受け入れには依然課題が残る。

 最も打撃を受けたのが整形外科だ。一三年に常勤医五人全員が病院を去る瀬戸際に追い込まれたが、市の要望の末に一人の派遣が継続されている。ただ、手術は医師二人が必要なため実施できない。静岡、沼津市など市外への救急搬送件数は昨年、整形外科系で前年の十倍、小児科系で三倍に跳ね上がった。

 相次ぐ派遣打ち切りは経営の悪化を招いている。一三年度の決算は前年度まで五年連続の黒字から一転、四億七千万円の赤字に転落。一四年度も赤字幅の拡大が見込まれている。

 現職の須藤秀忠氏(68)は「医師を浜医大だけに頼るのは限界がある」と話し、首都圏の大学病院からの受け入れを目指す。さらに十年後に耐用年数を迎えるとされる市立病院の改築前倒しを提案。財政計画の作成に着手する考えだ。「医療は日進月歩で古い設備は信頼を損ねる。整形外科医が戻れば財政的にも十分可能で、新しくするなら早いほうがいい」と訴える。

 対立候補に名乗りを上げている新人の高齢者支援NPO法人理事近藤千鶴氏(59)は「浜医大との関係悪化は現職の責任。自分が新市長になればリセットできる」と主張。一月の出馬表明後から浜医大訪問を繰り返し、教授らと意見交換を重ねている。公約には市立病院の負担軽減を目的に食育推進など病気予防を掲げ、医師の働きやすい環境づくりを盛り込んでいる。

(小佐野慧太)