静岡

節目のはままつ 鈴木市政3期目の展望<下>  

2015年4月16日

◆子育て支援、教育 保護者の納得が必要

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 「行財政改革の推進とともに『こども第一主義』に基づく子育て支援などで、子どもたちを産み、育てやすい、暮らしやすい街にしていきたい」

 鈴木康友市長が三選を決めた十二日夜、支持者の前で開口一番に実行を宣言したテーマの一つが「こども第一主義」だ。

 二〇〇七年の初当選時から、ずっと「一丁目一番地」に掲げてきた。三期目は、少子高齢化による人口減少という中長期的な課題への対応を迫られている。未来の活気ある浜松の土台となる子育て支援や教育の充実を着実に進められるかどうかは、これまで以上に鈴木市政の評価に直結してくる。

 今期の政策公約には任期末の一八年度までの具体的な目標が並ぶ。保護者が働く小学生を預かる放課後児童会は「千四百人の定員増」と明記。特に懸案の待機児童問題では、保育所の増設や、幼稚園に保育所機能を加えた「認定こども園」化を促して定員を三千七百人増やすことなどで「待機児童ゼロを目指す」としている。

 ただ、女性の社会進出が進む中で、定員増は新たな入所希望も生む。子どもを預けられるなら働こうと考えたり、これまで入所をあきらめていた人が希望したりするようになるからだ。こうした潜在需要にどこまで対応するか、判断は難しい。

 市が一四年度に出した試算によると、定員増を図った後の一九年度当初でも、保育所を希望しても入れない子どもが六百人余残るという。市幼児教育・保育課は「預かり保育などを紹介して対応したい」とするが、希望をどこまでかなえられるかは読み切れない。

 たとえ入所できても、保護者の悩みは多い。

 南区の保護者の女性(33)は「保育料や食費がかかり過ぎて、仕事、家事、育児で毎日が手いっぱい。経済的にも心にも余裕がなく、もう一人産もうとはとても思えない」と嘆く。

 足りない保育所の一方で、地域によっては定員割れを起こしている幼稚園もあり、対応を迫られている。市教委は一四年七月、市立幼稚園六十三園(当時)のうち十三園を一七年度末で閉園し、一部をこども園に転用する再編計画を表明。だが住民代表で構成する区協議会や保護者が反発し、九月に棚上げとなった。

 市側は一五年度以降、園児数の少ない市立幼稚園を中心に、保護者や住民と意見交換の場を設け、再編に理解を得たい構えだ。

 四月から市立幼稚園に長女を入れた東区の主婦(33)は「料金値上げの通知も新年度になってやっと届くなど有無を言わせない印象。制度変更や統廃合は『上から目線』で進めず、丁寧な説明を心掛けてほしい」と訴える。

 保護者の不安にどう寄り添い、施策を進めていくのか。鈴木市長の姿勢が問われる。

(久下悠一郎)