静岡

市長選を前に富士宮市政の課題<上>

2015年4月16日

 統一地方選後半戦で、十九日に告示される富士宮市長選は、いずれも無所属で再選を目指す現職の須藤秀忠氏(68)と、新人のNPO法人理事近藤千鶴氏(59)の一騎打ちになる見通し。新市長には富士山の世界文化遺産登録を生かしたまちづくりや、医師不足に悩む市立病院の立て直しが求められる。立候補予定者は市政にどう向き合うのか、現状の課題とともに追う。

◆富士山のまちづくり 滞在型観光地へ意欲

観光バスはよく見かけるが市内をすぐ後にするケースが多い=富士宮市の富士山本宮浅間大社で

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 「お客さんが市内に長く滞在するきっかけになれば」。県などは二〇一六年度、富士宮市中心部で世界遺産富士山を発信する富士山世界遺産センター(仮称)の開館を予定する。富士山本宮浅間大社近くで漬物屋を営む増田恭子さん(66)は「浅間大社を参拝してもすぐに帰ってしまう人が多かった」と、まち歩きの観光客増加に期待を寄せる。

 市の二〇一二年五月の調査では、半数以上の観光客が市内に一〜二時間しか滞在していない。一泊以上する人は7%にとどまり、「通過型観光地」からの脱却は商店主や観光関係者の願いだ。

 市側は中心部の見どころづくりを狙いの一つに、市内の歴史や文化を紹介する歴史館(仮称)の新設を目指してきた。しかし、市議会から「センターと事業内容が重複する」などと批判を受け、昨年度当初予算に計上した基本構想策定を昨秋見送り、計画を白紙化した。

 須藤氏は歴史館開設に意欲的だが、「後世に残る大切な施設を争点にしたくない」と公約からは除いた。選挙戦で掲げるのは、三月に策定した中心部の整備方針「世界遺産のまちづくり整備基本構想」の実現。内容にはセンターから浅間大社までの参道型遊歩道の整備や、民間資本を活用した昼夜問わず集える観光拠点づくりなどハード事業が目立つ。「世界遺産登録の好機を生かすには積極財政が必要だ」と主張し、ホテル誘致に向けては補助金交付要件を緩和する考えだ。

 近藤氏は、須藤氏が市長に就任した四年前と比べ、一般会計予算が当初比で四十億円以上増えていることを問題視。「市が交付する補助金も多額となっており、子や孫の世代につけを残す。財政健全化に努めるべきだ」と主張する。

 市の滞在型観光地化には「雇用拡大につながる」と意欲をみせ、ソフト面を重視した政策で差別化を図る。市長自ら映画やテレビ番組のロケ誘致に取り組むことや、中心部を歩行者天国にして積極的にイベントを開催することなどを掲げている。

(小佐野慧太)