静岡

検証 静岡市長選<上>盤石な組織選挙

2015年4月14日

 静岡市長選は、現職の田辺信宏さん(53)=自民、公明、改革推薦=が、新人のドラッグストアチェーン役員高田都子(ともこ)さん(62)と前県商工団体連合会事務局長松浦敏夫さん(62)の新人二人を大差で退け、再選を果たした。それぞれの戦いぶりと次期四年の課題を検証する。

◆推薦500以上束ねる

選挙戦最終日の総決起大会で、市議らとこぶしを突き上げる田辺さん=静岡市葵区で

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 こぶしを突き上げた二千人の「ガンバロー」が響き渡った。告示日の三月二十九日、田辺さんが葵区で開いた出陣式は大量動員で盛況だった。

 「自治会、企業、団体から五百以上」(支援者)の推薦を受け、市議四十八人の大半が支援に回った。千人単位の集会で動員力を示し、既存組織の支持固めを徹底。「決断力不足」「八方美人」と指摘していた自民市議らも選挙戦では現職批判を封印し、メンツを懸けて戦った。

 一方、高田さんの出陣式は三保松原の海岸で、参加したのは陣営の二十人ほど。あえて「動員ゼロ」(陣営)で政党、団体の推薦がない「しがらみのなさ」を打ち出した。

 長年のテレビ出演での知名度を武器に、出馬表明から四十日以内の短期決戦を狙い、旧来型の組織戦に対抗した。組織力での対決を避けたが、支援者の一人は「現職を推薦した自治会には高田を紹介することすらできなかった」と推薦状の威力を語る。

 初の女性市長として「女性市民税ゼロ」「人口百万人」を目指すと、意表を突く政策をぶち上げたが「男女平等に逆行する」と、女性にも浸透しなかった。ガラス張りの選挙カーでBGM付きの遊説、活動は逐一インターネットで実況中継と、型破りな選挙戦を展開したが、風は吹かなかった。高田さん自身も「時間が短かった」と悔やんだ。

 戦略を助言した元参院議員は「地上戦重視でボランティアを確保し、現職の批判票集めを徹底的にと伝えたのだが」と、組織力不足に加えて戦略が不十分だったと指摘する。選対本部長を務めた高田さんの兄隆右(りゅうすけ)さん(66)は「批判票は自然に集まると思っていた」と振り返った。

 松浦さんは高田さんよりさらに出馬表明が遅れ、支持が広がらなかった。手堅い組織選挙で勝利した田辺さんは「皆さま方の支えで個人演説会を何十回も開いていただいた」と手厚い支援に感謝。高田さんが繰り広げた「しがらみ」批判には「しがらみでなく絆。絆が私への期待だし、絆があるからこそ恩返ししなければならない」と強調した。

(河野貴子)