静岡

浜松市長選 100人に聞く

2015年4月13日

浜松市長選などの投票をする有権者たち=12日午前、同市中区で

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◆鈴木さんの業績評価 嶋田さんの「脱原発」広く賛同

 現職の鈴木康友さん(57)に一票を投じたのは、二期八年の行財政改革を認めたから。でも、最大の争点だった浜松市の行政区の再編問題は、まだ是非の判断がつかない。敗れた嶋田博さん(66)が掲げた公約のうち、脱原発の姿勢には共感できます−。十二日の浜松市長選で投票直後の百人に意見を聞いたら、有権者のそんな意識が浮き彫りになった。

 投票の際に最も重視したのは、候補者の「実績」が四十四人でトップ。「人柄・熱意」の十五人、「知人や職場の依頼」が九人で続いた。鈴木さんの圧勝ぶりと重ね合わせれば、市の借金残高を減らしたその手腕が高く評価された格好だ。

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 ただ、現在は七つある区を市政効率化のため減らそうという鈴木さんの主張については、「反対」が二十七人で、「分からない」が三十人。「賛成」も四十三人いるが、市民へのいっそう詳しい説明が今後必要になる。

 老朽化のため鈴木さんが廃止の方針を一時打ち出していた中区の市教育文化会館(はまホール)は、五十人が「存続」を望んだ。市が対応を再検討中だが、天竜区の理容師男性(38)は「音楽活動をしているので必要」と主張。浜北区の会社員女性(43)も「吹奏楽部の聖地」と話していた。

 また、鈴木さんに投票した人に嶋田さんの公約をあらためて吟味してもらうと、八十六人のうち二十五人が「『原発ゼロ、浜岡原発廃炉に』の意思をはっきり示す」に賛同。「保育所の待機児童解消」や「子ども医療費助成の拡大」など嶋田さんの他の公約に共感した人数を大きく上回った。

 「ドイツのように将来的にはなくしてほしい。浜岡原発が近くにあるのは心配」と訴えるのは、東区の会社員男性(43)。浜北区の自営業男性(65)も「放射性廃棄物を処理できるところがない。原発を後世に残してはいけない」と語った。

(浜松市長選取材班)

◆前山亮吉・静岡県立大教授「区再編の意義 浸透せず」

前山亮吉・静岡県立大教授

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 投票率が大幅にダウンした。鈴木さんが完全に信任を得られたとは、言いにくい。特に行政区の再編について「分からない」という人が30%を占めたのは、再編を訴える鈴木さんが、現状の区割りで何が問題なのか明確には示せなかったということ。論理的な説得がなく、有権者に必要性が浸透しなかった。

 区の再編は、市の赤字を減らすことを目的にした内向きの議論。赤字でも何かやるとか財源を広げるといった市の発展を打ち出す思い切った手が、鈴木さんから見えなかった。嶋田さんも同様で、有権者の関心を集められなかった。

 鈴木市政の八年間で、市政への関心が薄れ、市民も思考停止になっているのでは。現状維持を望む市民が多いため、区の再編に向けて市民の思考を打ち破るのはかなり難しいことだ。

 一方、嶋田さんの公約の中で、脱原発や減原発を支持する有権者が多かったことは、原発に対する危機感の表れ。ただ、浜松市ができることは少ないため、嶋田さんも原発ゼロの道筋を示せず、得票には結び付けられなかった。