静岡

有権者とつながれネット選挙

2015年4月9日

◆票に直結せずとも ネットで政策、人柄

県議選候補者の演説の様子をスマートフォンで撮影する陣営スタッフ=静岡市で(石原猛撮影)

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 二〇一三年夏にインターネットを使った選挙活動が解禁されてから初めて迎えた今回の統一地方選。静岡県議選や浜松市議選の候補者も、交流サイト「フェイスブック(FB)」や短文投稿サイト「ツイッター」で情報発信するなど、ネット選挙が定着してきた。「ネットは票につながらない」との意見も根強いが、専門家は「市民と政治家の距離を縮めるためにも、地方議員のネットでの発信は意義がある」と指摘する。

 「明日も元気に自分らしく頑張っていきます」。選挙戦中盤に入った五日夜、浜松市議選の中区に立候補した無所属新人は自身のFBに「顔文字」付きのコメントを書き込んだ。ネット上の友達百人ほどが「いいね!」と賛同を示すと、街頭演説の写真と合わせて拡散した。

 この候補は「人となりが少しでも伝われば、訴える政策も説得力を持つ」と二年近く、FBでの情報発信を続けてきた。「選挙中も自分で投稿するようにしている。読んでくれた人のコメントにも直接返信することで、関心を持った有権者と交流できる」と話す。

 北区の現職も、日ごろから議員活動をブログやFBに自ら書き込んでいる。告示後に投稿した記事は、毎日二百五十人ほどが閲覧しているという。「選挙区にはネットになじみがない高齢者が多いが、若い人にも政治に関心をもってもらいたい。投票率の向上に貢献できれば」と力を込める。

 県議選に出馬した県西部の無所属現職は、演説会のスケジュールや「浜岡原発の再稼働反対」などの主張をFBなどに掲載した。「地方議員が一人一人の考えを発信できる機会は多くない。自分の考えを伝えられる貴重な機会だと思う」と期待する。ただ、いずれの候補も「ネットでの活動が得票に直結するわけではない」との見方だ。地道な街頭活動などを補完する手段としてネット選挙を活用しているようだ。

 県議選に出馬する七十代のベテラン現職は、FBやブログで自身の意見をほぼ毎日発信してきたが、選挙期間中は控えている。「ベテランでも若手でも政治家として自分の考えを訴えることは大事だ。ただ物議を醸す内容だと、かえって票を減らしかねない」と語った。

◆積極的に情報発信を

 ネット選挙に詳しい元静岡大情報学研究科准教授の佐藤哲也氏の話 ネット選挙の解禁から二年が過ぎ、政治家のFBやツイッターの情報発信は定着しつつある。利用者の年齢層も広まり、支援者間で情報をやりとりして陣営の結束を強める効果も出ている。一方でネットでの政治活動に力を入れている都市部の政治家が選挙で苦戦するなど、「票には結び付きづらい」のも事実だろう。市民と議員の距離を縮めるため、選挙期間かどうかを問わず、多くの政治家が積極的に情報発信するべきではないか。

(石原猛、高橋貴仁)