静岡

候補者ルポ 静岡市長選<上>田辺信宏さん

2015年4月8日

 現職と新人二人が三つどもえの戦いを繰り広げている静岡市長選。十二日の投開票日まで残りわずかとなり、各候補の訴えにも力がこもる。支持拡大を図り、名前と政策の売り込みに東奔西走する三人の一日を追った。

(届け出順に掲載)

◆1日1000人と握手

個人演説会後に参加者一人一人と握手する田辺信宏さん=静岡市葵区で

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 選挙戦後半戦に突入した六日午前八時すぎ。静岡市清水区の狭い裏道を、一台の大きな白いワゴン車が走っていた。たどり着いた先は金属加工工場。金属を削るような甲高い音が響き、油の焼けた匂いが漂う。ワゴン車から降り立ったのは、背広にタスキ姿の無所属現職田辺信宏さん(53)だ。

 「多くの方々に支えられながら四年間、希望の種をまいてきた。実を結ぶには一人の百歩ではなく、百人の一歩。今こそ、その一歩を踏み出す時」と支持を訴え、従業員一人一人と握手する。支援を申し出てくれた企業へのあいさつ回りだ。

 この日は、二十分間の昼食休憩を挟んで清水区の三十社余りを訪問。大きな企業はなくいずれも中小企業。陣営幹部は「ものづくりが盛んな静岡では、経済も選挙も中小が要」と話す。

 午後五時前、葵区の後援会事務所に戻ると、連日の演説でからした声で支援者に「今日は約千人と握手できました」。笑顔で報告した。

 清水区にはこの四年間、公務で多忙な本人に代わり、妻の亮子さん(51)が定期的に足を運んで直接、地元の声を聞いてきた。その甲斐あって田辺さんも「四年前に比べ清水で温かい声援が増えた。ボランティアの団結力が固く心強い半面、(勝たなければという)責任の重さを感じている」と話した。

 午後六時半からは葵区のJA静岡市安東支店で個人演説会。安東地区の住民ら約百五十が詰め掛けた。地元選出市議の紹介を受けて田辺さんがマイクを持つと、会場から「待ってました!」と声援が飛ぶ。一期目の四年間を土台づくりと説明。二期目は「加速して成果を出す。継続は力なり」と訴えると、拍手が沸き起こった。

 仕事帰りに駆けつけたという会社員の男性(47)は「具体的で分かりやすく、現実的な話をする。次の四年間のビジョンもしっかりと持っているので、応援しようと思う」と話した。

(横光竜二)