静岡

市長選ルポ 節目のはままつ<上>現職の鈴木康友さん

2015年4月7日

◆行革の必要性力説

写真

 月明かりのほか周囲に街灯もない集会場。浜松市長選が告示された三月二十九日夜、天竜区春野町で、現職の鈴木康友さん(57)の張りのある声が響き渡っていた。

 「人口はどんどん減っている。税収も減るから借金は重くなる。無駄を削る行財政改革が必要だ」。二十分間の話の半分を費やし行革の推進を力説した。集まった高齢者ら約四十人は、ただ黙って聞いていた。

 市中心部から車で一時間半かかる中山間地域を、選挙戦初日に、あえて個人演説会の皮切りの場所に選んだ。陣営幹部は「自分たちが取り残されるんじゃないかと不安を持つ人が多い。誤解を解きたい」と狙いを話す。住民の理解なしには行革は進められないとみるからだ。

小雨の中、演説先に到着し市民に握手をする鈴木康友さん=5日、浜松市東区中田町で(山田英二撮影)

写真

 天竜区は、地域の担い手不足が問題になるなど過疎化が深刻だ。行政区再編や公共施設の統廃合といった行革の推進は、効率が悪い中山間地域の切り捨てにつながると受け止める住民も少なくない。

 これに対し「鈴木康友と言えば行革が代名詞のように言われるが、行革は目的ではなく、あくまで手段」と主張する鈴木さん。無駄を削って浮いた財源を、過疎化対策も含めた産業振興や子育て・教育の充実などにつぎ込んできた二期八年の実績を挙げ、自分の考えを分かってもらいたいと力を込める。

 四年前の再選時は、対抗馬が現れず、無投票当選に終わった。今回は初当選以来八年ぶりの選挙戦。告示の四カ月前に出馬表明し、「選挙がしたい」と挑発的な発言もしてきた。それも行革をはじめとした自らの政策を、市民に直接、繰り返し訴える機会が欲しかったからだ。

 だが「選挙の手応えはあるが、市民の反応を見ていると、行革への関心はまだ低い」。選挙戦中盤を迎える中、行革を十分に浸透させる難しさを感じている。

 陣営も、ただ勝つだけでは行革に信任を得られたとは考えていない。鈴木さんの後援会幹部で市政にも大きな影響力を持つスズキの鈴木修会長兼社長(85)は、出陣式の応援演説で区再編の必要性をひたすら熱弁。その上で「今回の選挙は信任投票。70%以上の投票率で当選させてほしい」と高い目標を掲げ、鈴木さんを●咤(しった)激励した。(●は口へんに七)

 市長としての多忙な公務の合間を縫った選挙活動。「久しぶりに燃えてきたよ」と自らを鼓舞し、行革を市民に深く理解してもらうのに近道はないとばかりに、地道に訴えを続ける。

(長崎高大)