静岡

責務 果たしたか 県議会この4年

2015年4月3日

 四月十二日投開票の統一地方選前半戦で、審判を受ける静岡県議。この四年間の任期中にどのような政治決断をしたのか。県議会で議論された二つのテーマで検証する。

◆原発住民投票

 中部電力浜岡原発(御前崎市)の再稼働の是非を県民自らが意思表示する場をつくろうと、市民団体が十六万五千人余の署名を集めたのは二〇一二年夏。請求に必要な有権者の五十分の一(約六万二千人)を大幅に上回る署名を手に、団体は住民投票条例制定を求めたが、県議会は反対多数で同年十月に否決した。

 否決の最たる理由は「国策である原発の再稼働の是非を住民投票で問うのは妥当ではない」との意見。加えて、「投票資格は十八歳以上」「投開票は施行から六カ月以内」と定めた団体の条例案に対し、県が「新たなシステム構築に時間がかかり、実務的に実施不可能」と指摘したことで、県議の多数が実施に慎重姿勢を強めた。県議有志が修正案を提出したが審議なく否決、議論が十分尽くされたと言えない結果となった。

 条例制定請求に参加し、現在も投票実施を求める市民団体「原発県民投票2015」の中村英一代表は「再稼働の是非など中身の議論が深まらなかったのが残念だ」と振り返る。今回の県議選候補者には「県民が再稼働の是非に意思を示すことができるようにしてほしい」と、住民投票の実現に努力することを求めた。

 法政大の白鳥浩教授(現代政治分析論)は「エネルギー政策という国の基本的政策であっても、議員は考えを明らかにし、住民の意見も聞くべきだ。浜岡原発の再稼働の時期が見通せなくても議論を避けるべきではない」と訴える。

◆教育長人事

 任期満了が迫る今年三月には、県教委の新教育長に県立大の高木桂蔵名誉教授(73)を充てる同意人事案をめぐる議論が噴出した。

 文部科学省は教育長を選ぶ際、候補者の所信表明を求めている。教育への考えなどを直接聞くため、一部の総務委員は当初から高木氏の招致を求めていたが、総務委は三日、高木氏に意見聴取せずに、全会一致で同意人事案を可決した。

 議会が迷走し始めたのは溝口紀子教育委員長が高木氏の経歴に「疑義がある」と本人の聴取と再審査を要請してから。総務委は、結論を出した議案を再び取り上げる異例の再審査に踏み切った。十八日に高木氏を招致し再審査した結果、「公人の教育長として不適切な発言、言動が目立つ」と、一転して否決した。

 静岡大の日詰一幸教授(行政学)は「総務委が最初から本人を呼んで審査する必要があった。再審査は県議会初の異例の事態で、望ましくない。議会のチェック機能が正常に働いていればこうしたことは起きなかった」と批判する。チェック不足が四月の新教育委員会制度開始時に都道府県で唯一、教育長が空席という事態を招くこととなった。

 存在意義が問われる中、県議選で立候補者は何を訴えるのか。有権者が注視する中、選挙戦が始まる。

(本田英寛)