静岡

議員報酬「生計に不安」 

2015年4月1日

 国や地方の行財政改革が進む中、議員の報酬にも厳しい視線が向けられている。静岡県議(正副議長除く)の月額報酬は八十二万五千円。一般的な会社員の給与と比べればかなり高額だが、議員ならではの出費も少なくない。報酬のみで一家の生計を支えるのに不安を抱き、地方議員のなり手が不足する地域もある。ある県議の暮らしぶりを聞いてみると−。

◆なり手不足の地域も

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 「県議になれば、もう少し貯金できると思っていました」。県中部の若手県議は苦笑し、昨秋の一カ月の支出を説明した。主婦の妻と小学生二人の四人家族。一人はこの春から公立中学に進学する。「義務教育のうちはいいが、高校、大学と将来の不安が無いと言えばうそになりますね」

 税金などを除いた毎月の報酬は約六十一万円。うち十五万円が政治活動の支出で、保険料や教育費なども含めた生活費は四十四万円ほど。差し引き二万円前後が手元に残る。「年二回の期末手当もあるが、選挙では百万単位の支出が必要。四年間の収支はほぼつり合うと思う」と説明する。

 県議の中には副業を営んだり、各種団体の役員報酬を得る人も多い。広い自宅や土地があれば、事務所費や駐車場代は必要なくなり、政治活動の支出も節約できる。この県議は「議員に専念した方が充実した調査活動や政策提言ができる。お金持ちでなくても政治家になれるよう、ある程度の報酬は必要」と話す。

◆政務活動費に厳しい目

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 昨年七月に公開された県議の二〇一三年の平均所得は千四百十八万円。同年の県内平均年収は約四百七十万円で、三倍以上多い。議員報酬のみを受け取っている場合の年間所得は約千七十万円だが、二千万を超える県議も六人いた。

 県議会の定例会は年四回あり、一四年度に本会議や常任委員会が開かれたのは計四十日。ある若手県議は「議会のない日でも有権者と意見交換したり、質問を考えたりする県議もいるが、議員活動をあまりしていない人もいる。報酬が高すぎると思われても仕方ないかもしれない」と語る。

 報酬とは別に一人当たり月四十五万円の政務活動費もある。資料や事務用品の購入、視察に向かう交通費など議員活動に掛かった実費を請求できる。ただ公開された収支報告書を確認すると、居酒屋での飲食費など政務活動に使われたのか疑わしい出費もある。

 県中部の県議は「積極的に活動するほど経費が掛かる。一部が不正な使い方をすると、議会全体に厳しい目が向けられる」とこぼす。別の県議は「全国的に議員を目指す若者が減り、今回の県議選でも無投票の選挙区がある。県議より報酬が少ない市町議員などは、なり手不足も深刻だ」と指摘。「優秀な人材に議員を担ってもらうには、定数を減らしてでも、一人当たりの報酬を確保すべきだ」と訴える。

(石原猛)