静岡

節目のはままつ<下>財政健全化

2015年3月28日

◆市債削減に異論も

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 年収の数倍はするマイホームをローンで買い、二、三十年かけて少しずつ借金を返済している家庭は多いはずだ。年間総予算に匹敵する借金(市債)を抱える浜松市も、次世代に過大なツケを回さないよう残高をこつこつ減らしてきた。

 財政立て直しのため、政令市に移行する前の二〇〇六年度末に策定した中期財政計画では、当時の予算総額を上回る五千六百三十二億円に膨らんだ総市債残高を、八年後に五千億円未満にする目標を設定。リーマン・ショックや東日本大震災の影響で財政事情が苦しい時も、インフラ整備などの投資的経費を極力抑え、予定を上回るペースで借金を減らした。

 その結果、一四年度末には四千九百五十六億円として目標を達成。政令市では市民一人当たりの残高が三番目に少なくなった。

 さらに市は、今後も徹底した行政改革を進め、財政健全化への歩みは緩めない構えだ。一五年度からの次期中期財政計画では、十年間で六百四十八億円減らし、二四年度末に四千三百八億円まで圧縮することを目指す。

 だが市は、高度成長期に造られた道路や橋などのインフラや公共建造物の老朽化、団塊世代の高齢化に直面している。今後、公共サービスの水準を維持しようとすれば、相当の出費が必要になるのは避けられない。

 次期計画では、市債残高削減の一方、新清掃工場の建設などの大型事業やインフラの老朽化対策などを考慮し、現行水準と同じ投資的経費も計上している。市の財務担当者は「これくらいの削減なら無理せずに到達できる」と自信を見せるが、思惑通り出費と財政健全化のバランスを取れるかが課題だ。

 市の取り組みに対し、市議会も行財政改革の必要性自体は、ほとんどの会派が認めている。半面、今後の方向性には異論もある。

 代表質問や各議員の主張などをみると、鈴木康友市長に近い創造浜松や市民クラブには「未来の借金はできるだけ少ない方がいい」と市債残高のさらなる削減に積極的な意見が多い。

 残高減らしよりもインフラや公共サービスの維持に重点を置く会派もある。自民党は「やみくもに減らせばいいものではない」との立場で、「適正な残高を維持し、投資的事業を早期に推進することが結果的に世代負担を公平にし、安定的な財政運営につながる」と指摘する。

 共産党は、他の政令市との財政指標の比較から「財政状況は今が極めて健全と言った方が適切。この財政力を市民の暮らしに振り向けるべきだ」と主張している。

(古田哲也)