静岡

静岡市長選 県都の課題<上>止まらぬ 若者「流出」

2015年3月28日

人口70万人維持の一環で、静岡市は保育所の定員不足への対策として独自に「待機児童園」を設けている=静岡市葵区で

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 現職、新人による三つどもえの選挙戦が予想される静岡市長選。二十九日の告示を前に、県都が抱える課題を二回に分けて検証する。

 「都市間競争の時代を迎えた今、人口が減少している都市は競争で後れをとっていることになる」。静岡銀行のシンクタンク、静岡経済研究所の顧問でシニアエコノミストの中嶋寿志さんは人口減少に警鐘を鳴らす。

 静岡市の人口は一日現在で七十万五千二百人余。全国二十の政令市の中で最も少ない。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、五年後に六十六万七千八百人、二十年後の二〇三五年には五十七万四千四百人と六十万人を下回る。

 年代別では、十五〜十九歳、二十〜二十四歳の若年層の市外転出割合が高い。大学進学と就職時に当たる年齢層だ。

 市は子どもの医療費助成を拡充するなど子育て世代が魅力に感じる政策を進めたが、人口減少に歯止めはかからない。県内市町別で、静岡市は二月からの一カ月間で五百五十人減少し、二位の沼津市(百二十七人減)と比べても飛び抜けて多い。

 田辺信宏市長(53)は人口七十万人維持を唱え、一五年度から対策を強化する方針を示している。東京・有楽町に移住促進センターを設け、移住希望者に住宅、就職などの情報を提供。市内から東京の大学に通えるよう新幹線通学の助成制度も検討する。市の奨学金を拡充し、Uターン就職する学生は返済を免除する制度も設ける方針だ。

 人口減対策は市長選の争点でもある。薬局会社役員の高田都子(ともこ)さん(62)は「人口百万人」を掲げ、女性の流出に歯止めをかけるべく「女性の市民税ゼロ」も打ち出す。九十四億円の歳入減になるが、建設事業など投資的経費や補助金などを見直し、財源を確保する考えだ。

 前県商工団体連合会事務局長松浦敏夫さん(62)は、子どもの医療費助成の十八歳まで拡大、若者の家賃助成や低所得者の児童クラブ料金減免の拡充を掲げ、特別養護老人ホームの増設を訴える。

 「静岡の温暖な気候、友人と過ごした豊かな時間が忘れられなかった」。青森県十和田市出身の福山康大さん(25)は県立大を卒業後、東京都内の飲食店で働いていたが、半年で青森ではなく静岡市に戻った。ただ恵まれた自然環境などに任せてばかりで人口が上向きに転じるわけではない。次の四年間で、目に見える成果が求められる。

(横光竜二)