静岡

節目のはままつ<中>産業振興

2015年3月27日

◆車頼みから脱却を

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 県庁所在地でもなく、東京・大阪・名古屋の三大都市圏内に位置するわけでもない浜松市が、不利な立場をはね返し、政令市にまで発展できたのは「ものづくりのまち」としての民間の産業力があったからだ。

 直近(二〇一〇年)の国勢調査によれば、浜松市の第二次産業の就業人口割合は34・4%。政令市の中では唯一30%を超え、他都市を突き放す。一三年度の製造品出荷額は二兆一千三百二億円。中でも自動車などの輸送用機械器具は半分近い一兆三百二十二億円を占める基幹産業だ。

 市産業振興課の担当者は「輸送用機械器具という基幹産業があるのは市にとって大きなメリット」と前置きしつつ「特定産業に依存するのはリスクも大きい」と語る。

 なぜなら〇八年のリーマン・ショックにより、市内の製造業は三百七十カ所の事業所、一万六百二十二人の従業員が一年間に減り、地域経済は深刻な打撃を受けた。それ以降、全国の中でも浜松は特に回復が遅れているからだ。

 そこで市が推進し始めたのが産業構造の多極化。一一年十月に策定した「はままつ産業イノベーション構想」には、新産業創出の戦略が盛り込まれた。

 次世代輸送用機器(電気自動車やロボット関連)、健康・医療、新農業、光・電子、環境・エネルギー、デジタルネットワーク・コンテンツを成長六分野と位置付け、戦略的に輸送用機械器具に続く基幹産業を生みだそうとしている。

 市議会各会派も新産業創出の方向性にはおおむね同調しており、政策集や市長に提出した政策要望の中では、関連する提案が産業政策の主要な部分を占める。

 自民党は「多様な産業分野でのイノベーションの推進」、市民クラブは「六つの新産業創出の各事業分野ごとの目標と戦略ロードマップの構築」と、いずれも産業構造の多極化に言及している。

 浜松市は第二次産業だけでなく、第一次産業の就業人口割合も4・2%と政令市の中で最も高く、全国平均の4%も上回っている。今後発展する可能性のある分野の一つとして、農業に着目する会派もある。

 創造浜松は「企業の農業参入、一次産業の六次化政策などを通じた農業の活性化」を訴えている。公明党は中小企業の振興を通じた農林水産品、観光資源などのブランド化を提言している。一方で共産党は大企業よりも中小零細企業への支援強化を訴える。

(長崎高大)