静岡

対決 静岡市長選<上>高田さん出馬表明

2015年3月4日

 静岡市のかじ取り役を選ぶ市長選に、二期目を目指す現職田辺信宏さん(53)の対抗馬が名乗りを上げた。大手ドラッグストアチェーン「ウエルシア薬局」取締役、高田都子(たかたともこ)さん(62)。四月十二日の投開票に向けた短期決戦。立候補予定者は一気に走り出した。

◆市の現状に危機感 県との連携示唆

静岡市長選への出馬を表明し、支援者と握手する高田都子さん=3日、静岡市葵区で

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 三日夕、市役所前に延びる青葉シンボルロード。高田さんは集まった市民を前に「市の現状にとても強い危機感を持っている」と、告示が迫るぎりぎりでの決断理由を語った。止まらない人口減少と県との連携不足、知事との不協和音。近くのビルに会場を移しての出馬会見では、経営者としての手腕を強調し「市民の選択肢をつくるため出馬を決めた。今の段階で何か手を打たなければならない」と訴えた。

 出馬宣言の前夜には、高田さんの兄で旧高田薬局ウインダーランドの創業者、隆右(りゅうすけ)さん(66)の自伝出版記念会が市内であった。壇上で乾杯したのは静岡県の川勝平太知事。高田さんを「ともこちゃん」と呼び、子育て支援施策を通じて以前からの親しい間柄をアピールした。財界人や一部市議、元衆院議員の姿もあった。

 高田さんの名前が急浮上したのは一月半ばすぎ。田辺市政に批判的な市議や県議の間で一気にその名が拡散した。ただ母親の介護を理由に、出馬の可能性は消えたとみられていた。

 しかし高田きょうだいは財界人や元国会議員、市議、県議らと次々に会い、情報を集めながら勝ち抜く可能性を探り、水面下で支援の輪を広げていた。二月二十四日には市内のビルの一室にきょうだいと市議二人、財界人ら約十人がひそかに集結。市長選のキャッチフレーズや戦略を練る事実上の「選対会議」を開き、着々と出馬準備を進めた。午後六時からの会合は熱を帯び、五時間を超えた。

 生き馬の目を抜く企業経営者から政界へ。高田さんが出馬に傾いた理由を、隆右さんは「自伝執筆で市民の声を聞き、現状への不満の多さに驚いた。妹は経営者感覚で現状を変えたいと考えるようになった」と明かす。ただ政治の素人であることや組織がないことから表明には慎重だった。二月半ばになっても外部には「出馬は99%ない」(隆右さん)と断言していた。

 満を持して臨んだ三日の会見で、「(田辺市政が)うまくいってないという声がいっぱい聞こえる。このままでは次の世代に渡せない」と語った高田さん。しがらみのない政治と決断力、行動力で、市の課題に立ち向かう市民の代弁者としての自負をにじませた。 

(河野貴子)