静岡

市長選・節目のはままつ行政区再編<中>

2015年3月2日

◆本当に利点ばかり?

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 「浜松市の七行政区を三区に再編すれば、年十億円余り経費削減できる」

 民間委員でつくる市行政経営諮問会議が二月四日に開いた初の公開審議会。市が提示した資料には、合区の試算四案とその効果額が記されていた。

 三区にする案は、中区に東、西、南の三区を、浜北区に北区または天竜区を編入する。区役所の管理・総務部門を集約し職員や施設の維持管理費などを削る。

 最寄りの区役所がなくなる不便には「区役所でのサービスを協働センターが担うこともある」と説明。住民票の交付や介護保険に関する手続きなどの窓口業務を扱うセンターの活用を示した。区内の歴史など特色を生かしたまちづくりが阻害されるとの懸念にも、地域の自治会活動の支援などをするので「影響はほとんどない」とした。

 これを受け、諮問会議は二十三日、区再編を進めるよう提言。会長代行の大須賀正孝浜松商工会議所会頭は「十億円の経費を削る一番簡単な方法。ここからやらないと改革はできない」と訴えた。答申を受け取った鈴木康友市長も「区の問題は今やらないといけない課題だ」と同調した。

 諮問会議が区再編を強く求める背景には、十二市町村が合併した浜松市ならではの事情が深くかかわる。

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 市町村では岐阜県高山市に次いで全国二番目、伊豆半島よりも広い市域に、浜松から米サンフランシスコまでの距離と同じ総延長八千四百キロの道路、六千本の橋、千六百カ所の公共施設を抱える。合併前の旧市町村がそれぞれ設置した文化会館や体育館といった類似施設も多い。市はその更新や維持管理に今後五十年間で三兆二千億円が必要と見込む。一般会計予算二千七百四十億円(本年度)の市にとって大きな負担だ。

 諮問会議は、小中学校の統廃合など公共施設の整理やインフラの長寿命化を進めても、年百億円超の財源不足が生じると警告した。

 会長の根本祐二東洋大教授(公共政策)は「浜松市は行政施設が非常に多い点が弱みなのは明らか。小中学校も統合を進めざるを得ない中で、行政施設を残す方がよほどおかしい」と話し、区役所など行政施設の削減は最優先という見方をしている。

 ただ、効果や必要性ばかりが強調されることに、疑問を挟む声もある。

 市の試算にある区再編の効果額は大半が人件費。減る仕事量と職員に払う給与などの掛け算で額を出している。再編に慎重な自民党市議は「機能の集約で仕事量は削減できても職員は辞めさせるわけでなく残る。即座に十億円の効果が出るようにアピールするのは誤解を生む」と批判する。

 諮問会議の答申や資料には載らなかった近年の区役所の業務取扱量のデータをみると、協働センターや市民サービスセンターの利用は減っている半面、区役所の利用は増えている。諮問会議のある委員は「区役所が(地域に)定着してきたということではないか」として、区再編によるデメリットを丹念に調べる姿勢を市に求めている。

(長崎高大)