長野

<明日のまちづくり>(上)諏訪市、“一等地”の活性化急務

2015年4月16日

閉店した大型商業施設の建物が残るJR上諏訪駅前。日曜日の昼時も閑散としていた=諏訪市で

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 任期満了による諏訪、茅野両市長選が十九日、告示される。市政のリーダーが、いかに市民の期待に応えるまちを創造していくのか。地方の時代といわれる中、その手腕はますます問われる。両市が当面する課題を探った。

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 「高校生が気軽に立ち寄れる場所として、市営浴場の空きスペースを使わせてほしい。諏訪を活気あるまちにすることができる」

 JR上諏訪駅周辺のまちづくりを考える市民会議「ちぇんじ・すわ・みーてぃんぐ」に参加した高校生委員が八日、市中心部の浴場を音楽やダンスの活動拠点に活用したいと山田勝文諏訪市長に直接申し入れた。

 二〇一一年に駅前の「まるみつ百貨店」が閉店し、昨年十二月には隣接する商業ビル「スワプラザ」の商業棟が閉鎖。周辺の商店の客足にも影響が及び、市の玄関口は沈滞ムードが広がる。

 市が昨秋に公表した市民満足度調査結果では、五十一の施策の中で「にぎわいのある商業地」が五点満点中二・三八点と最も満足度が低く、市街地の空洞化への不満が浮き彫りになった。

 街中に居場所を失った高校生たちも思いは同じ。「青春を謳歌(おうか)できなかったまちに、大人になって戻りたいとは思わない」と率直に語る。

 駅前一帯は民間会社「諏訪駅前開発」が再開発を計画する。旧まるみつ百貨店とスワプラザの建物を取り壊し、生鮮食料品店や飲食店、集合住宅などが入る複合施設を新たに建設する構想。だが具体像はいまだに見えず、先行きを不安視する声もある。

 「今からでも専門家や住民を交えた話し合いの場を設け、夢が描けるものをつくってほしい」。商店街の活性化に取り組む「まちづくり諏訪」代表の上條恭平さん(40)は市に対し、住民の要望を再開発に反映させる役割を期待する。

 市は、厳しい財政事情を理由に駅前再開発は民間主導が望ましいとし、サポート役に徹してきた。上原哲夫副市長は「まずは業者と地権者の合意形成が重要。開発に向けた段取りをしっかりと積み重ねていくことが、駅前の活性化への近道」と話し、積極的な関与には慎重な姿勢だ。

 駅前再開発と並び、“一等地”の活用方法が懸案になっているのが、諏訪湖畔にある旧東洋バルヴ諏訪工場跡地だ。〇六年までに市土地開発公社が七・二ヘクタールの広大な土地を二十七億六千万円で先行取得。市は建屋を無償で譲り受け、土地は寄付を募りながら分割購入している。

 跡地の活用をめぐっては、観光協会や商工会議所などによるプロジェクトで検討したが結論は出ず、山田市長が選挙公約に掲げた温泉リハビリテーション施設の誘致も、諏訪医療圏の病床数が基準を超えているため困難となった。

 建屋の規模は延べ面積九千八百平方メートルに及び、地方の工業展示会としては国内最大級の「諏訪圏工業メッセ」の会場や消防の訓練などに幅広く利用されてきた。しかし、改正耐震改修促進法に基づき本年度実施する耐震診断の結果によっては、老朽化により現状のままの使用ができなくなる可能性もある。

 「解体するにも多額の費用がかかる。跡地をどうしていくのか決めなければならない」と市担当者。新市長は、棚上げになったままの問題に決断を迫られることになる。

 (中沢稔之)