三重

12年ぶりの選挙戦川越町議選

2015年4月24日

 川越町議選が告示された二十一日。狭い町内を何台もの選挙カーが行き交い、スピーカーから候補者の名前が連呼される。「四年前とは、えらい違いだね」。自宅で庭の掃除をしていた高齢の男性は、少し驚いた表情を見せた。

 四年前の前回はもとより、八年前の前々回も無投票で、選挙戦は二〇〇九年の補選を除けば実に十二年ぶり。今回も定数一二に対して立候補者は十三人で、かろうじて選挙になった。ある現職候補は、告示前に「どうせ、また無投票やろ」という声をよく聞いたと打ち明ける。

 八・七三平方キロの面積に、一万四千人余が暮らす。世界最大規模の中部電力川越火力発電所が立地するため税収に恵まれ、県内で唯一の地方交付税の不交付団体。水道料金や保育料は他の市町に比べて安い。都市に近く、交通の便も良く、人口は微増傾向が続く。

 二回続けての無投票。町幹部は「町を二分するような課題がなかった」と分析し、別の幹部は「各地区から一人ずつ代表を出すという性格が、まだ残っているのでは」とみる。

 とはいえ、大半が海抜ゼロメートル地帯の町内は、南海トラフ巨大地震が発生すれば、津波でほぼ全域が浸水すると予想される。中電頼みの税収からの脱却という課題も指摘される。「選挙で選ばれた議員でないと、議会も活気づかない」という町民の声は少なくない。

 立候補するのは、現職十人と新人三人。新人候補の一人は「無投票は町のためにならない」と住民の後押しを受けて決意したという。一方、現職候補のうち四人は、一度も選挙経験がない。「自分に票を投じてもらったことがないので、新人のつもりでやる」と戸惑いながら選挙戦に臨む。

 若い世代が多い新興住宅地に、あいさつ回りに行った候補者は「うちは関係ない。選挙に行く予定自体がない」と言われたという。「選挙がないことで、住民が町の課題に関心を持たなくなってしまうことが怖い」と話した。

 (河崎裕介、下泉亮一)