三重

<20万都市の未来へ 鈴鹿市長・市議W選>(下)産業振興

2015年4月18日

新名神高速の建設が進む鈴鹿市西部地域。新たな企業の集積は進むか=同市山本町で

写真

 三月中旬、鈴鹿市西部、東名阪自動車道鈴鹿インターチェンジ(IC)に近い工業団地であったミネラルウオーター工場の完成式。その場で語られた進出の決め手は、市関係者を大いに喜ばせる一言だった。「鈴鹿が与える清らかな印象が、水にピッタリ。関西への道路網の良さも大きな魅力」

 これまで鈴鹿の発展は、牧田、玉垣、白子地区などにあった広大な海軍施設跡地に戦後、製造業を誘致したことにある。特に、一九六〇年に操業したホンダ鈴鹿製作所。層の厚い自動車関連企業の集積が、市の産業を引っ張ってきた。

 それが二〇〇八年秋のリーマン・ショックを機に、状況は一変した。〇六、〇七年に一兆五千億円を超えていた市内の自動車関連の製造品出荷額は、一〇年に一兆円を割り込んだ。ホンダは、鈴鹿を軽自動車の拠点工場とする改革の途上にある。

 市税への影響は多大だ。本年度の市税の見込みは二百七十八億円で、ピークの〇七年度より六十億円少ない。当時は七十億円近かった法人市民税が、一七億円弱にまで落ち込んでいるのが大きい。

 しかし法人市民税の大幅回復は、当面は見込めない。企業は過去に出た税務上の赤字を、翌年以降の黒字と相殺する「欠損金の繰越控除制度」があるためだ。経営を立て直した後に長く納税してもらうための措置で、企業は赤字を出した後に利益が出た年があっても、すぐに法人税を納めなくてもよい。

 さらには、製造業全体がリーマン前より縮小したままのため、市内の製造品出荷額のうち、自動車関連が四分の三前後を占める状況が変わっていないことも懸念材料だ。裏を返せば、「ホンダ頼み」の時代は終わり、新たな柱となる産業の育成が急務といえる。

写真

 市が新たに企業誘致を進め、発展の起爆剤に見込むのが市西部地区。既存の東名阪に加え、一八年度末までに新名神高速が開通予定で、さらに交通の便が良くなる。

 狙いは通販などで需要が高まる物流企業の拠点や、販路拡大を目指す食品メーカーなど内需型の企業だ。市は新名神の鈴鹿パーキングエリアに設けられる簡易型ICの一帯に工業団地を造成し、そうした企業を集める青写真を描く。

 ただ、整備を進める枠組みづくりや用地の確保などはまだ手付かず。整備の完了までに少なくとも五年以上はかかるため、開通時には間に合わない。既存の工業団地のスペースは限られ、それまでにいかに誘致先を用立てるかが課題となる。

 市は物流や食品のほかに、県も推進している医療・福祉関連やロボット、航空宇宙産業の育成も目指す。当然、今後の拡大が期待できる数少ない分野の企業は、どの市町も喉から手が出るほど欲しい。激しい地域間競争に勝つためには、ほかには負けない優位性を企業に訴える本気度が、今まで以上に問われる。

    ◇

 この企画は鈴木智重が担当しました。