三重

<県都の発展は>(上)中心街活性化

2015年4月18日

商店街を親子連れが歩くきっかけにつながった「大門いこにこ広場」=津市大門で

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 人通りがまばらな津市の大門大通り商店街で、親子連れが集まる一角がある。空きビルを改装し、未就学児と保護者が無料で利用できる拠点「大門いこにこ広場」。多いときは一度に五十組もの親子でにぎわう。「二年前には見られなかった光景だ」と、市の担当者は話す。

 市は二〇一二年度から三重大と連携し、商店主や市民が同じテーブルでまちの活性化を考える座談会を始めた。一三年十月にオープンした大門いこにこ広場も、座談会で出た構想を具現化し、市などが資金援助した。

 市担当者は「店主に限らず、市民も立場を超えて話せる場を設けたことで、新たなアイデアが生まれるようになった」と手応えを口にする。

 津観音に通じる大門大通り商店街は、かつては市の商業の中心地だった。車社会の発達で郊外に大型店進出が加速し、客足は徐々に遠のいた。同商店街振興組合のメンバーも徐々に減少して、〇四年は六十二人。現在はさらに減って五十五人。商店街の通行量も十年の間に四割減った。

 市は三重大に協力を要請する以前から、商店街のてこ入れを図ってきた。組合主催のイベントに資金援助し、空き店舗対策として家賃と改修費の補助制度を整えた。商店街を巡るウオーキングも開催してきた。それでも抜本的な解決策に結びついてはこなかった。

 三重大と共に市民らの意見を引き出すという新たな手法で始めた商店街の活性化プロジェクトで、大門いこにこ広場は、新たな人の流れを生み出した。市は本年度、プロジェクトの一環で、商店街に市民や店主らが話し合える拠点をつくろうとしている。市担当者は「商店街の活性化は人ごとではない、と市民が考えるようになるのでは」と期待する。

 さらなる課題も見えてきた。親子連れを商店街に誘い出せるようにはなったが、買い物客の増加には必ずしもつながっていない。商店街で画廊を開く伊藤守夫さん(72)は「何もやらないよりは良い。ただ、親子連れの多くは商店街を通過するだけで、今は波及効果が見えない」と指摘する。

 座談会の参加者は三年間で延べ六百人と多いが、商店主はそのうち一〜二割。市担当者は「商店街の人も話し合いの場に継続して巻き込んでいかなければ、事業は広がっていかない」と明かす。

 市民や店主らの本当のニーズを掘り起こして活性化のゴールを明らかにし、行政が積極的に事業化につなげる。そんな新しい支援モデルを築けるかが問われている。

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 津市長選が十九日、告示される。再選を目指す現職の前葉泰幸さん(53)のみが出馬を表明しており、三十七年ぶりに無投票となる見通しだ。県都として成長し続けるために抱える課題を探る。