三重

人気後押し、増す存在感知事選

2015年4月14日

 12日の知事選で60万票余を獲得して再選を果たした鈴木英敬さん。得票率(85.68%)は史上5番目の高さで、平成の知事選の中では最も高い。その発言力はさらに重みを増しそうだ。ただ、同時に実施された県議選は波乱含みの結果となり、鈴木さんの今後の県政運営にも影響を及ぼす可能性が出てきた。

 「人の懐に入り込むのがうまい」「敵をつくらない」。鈴木さんを評し、周辺からはそんな声が上がる。四年前の前回選で対立候補を推した民主・連合系の勢力とも適度な距離感で接し、時には相手の主張も柔軟に取り入れた。選挙戦で連合三重と新政みえが鈴木さんを推薦し、民主の間で主戦論が広がらなかった要因の一つだ。

 「県民党」を掲げ、幅広い推薦や支持を受けた今回の選挙戦。しかし、十二日夜の当選インタビュー会場では「筋を通すため」に鈴木さん自らが推薦を依頼した自民、公明の地元選出国会議員が鈴木さんの両脇を固め、その存在感を全面的にアピール。両者の親密ぶりをあらわにした。

 選対組織には自公関係者が名を連ねたが、鈴木さんは「選挙実務と、幅広く政策を実現させる県政運営はイコールではない」と強調。同時並行だった県議選とも「連動させない」と言い、両党の県議選候補者と街頭演説をすることはなかった。

 ただ実際には、鈴木さんと両党との「戦略的互恵関係」の深さが垣間見える場面も。鈴木さんの後援会組織がない地区で開かれた個人演説会では、自民のベテラン県議が水面下で陣頭指揮を執った。県議は演説会場には入らなかったが、出入り口で訪れた有権者にあいさつし、共同歩調ぶりをアピールした。

 自公推薦という「におい」を消す香水でもあり、民主・連合系にとっては全国最年少知事の人気にあやかるための助け舟、そして鈴木さんが幅広い支持を集めるためのてこになった魔法のつえ−。それが選挙戦で担った県民党の役割と言える。

 「三重県でも自公政権の形をとる」。自民党県連の幹部は投開票前、強い決意を口にした。鈴木さんが当選した二〇一一年以降の国政選挙で、快調な戦いを続けてきた自民。しかしふたを開けてみれば県連会長の地盤で二議席を減らすなど、擁立した二十六人のうち五人が落選。対照的に新政みえは二十三人全員が当選し、最大勢力の維持に成功した。新政みえのある重鎮議員は早速、「地域政党としては鈴木さんを推薦したが、会派としては緊張感ある関係を保つ」とけん制球を投じた。

 「オール与党の打破」を掲げた共産も二議席の奪還を果たす中、その発言力と政治基盤の厚みを増した鈴木さんが「三重県丸」のかじ取りをどう進めるのか、注目される。

 (相馬敬)