三重

<県議選 激戦区ルポ>(3)

2015年4月9日

◆4議席に4現職、2新人 鈴鹿市区

藤田宜三63 民現<2>

南条雄士41 無新

伊藤健司51 自新

下野幸助38 民現<1>

小林正人48 自現<2>

彦坂公之55 無現<1>

 前回より一人多い六人が出馬。現職四人と、ともに市議からの転身組の新人二人が激戦を繰り広げている。民主・連合系会派「新政みえ」に属する現職三人が議席を死守するか、自民が二議席を奪い返すかが最大の焦点だ。

 鈴鹿市を含む衆院選三重2区は、民主の現職が七期連続で議席を守る“牙城”。ただ、政権与党だった二〇一一年の前回よりも党勢は細る。昨年十二月の衆院選で、市内の比例得票は自民を四百票近くも下回った。

 「大丈夫なら、自分の選挙区でない鈴鹿に来ません」。岡田克也民主党代表は四日、民主公認の藤田さん、下野さんの両人を応援して回り、危機感もあらわに熱弁を振るった。

 花き生産業の藤田さんは、農業が盛んな市西部地域を基盤とする。地域医療の勉強会の代表を務めるほか、産業振興を前面に出して保守層にも食い込み、地盤は厚い。出陣式では自ら、「藤田は大丈夫とうわさが流れているが、手を抜いたら負ける」と、下野さんとの票割れを強く警戒。告示後は、計五十七カ所で集会を予定し、引き締めを図る。

 内閣官房職員などを経て出馬した前回、四議席目に滑り込んだ下野さん。「現職の中では最も地盤が弱い」と危機感を抱き、四年間で百四十回近く県政報告会を重ねるなど、組織づくりに汗をかいてきた。候補者中で最年少という若さをアピール。ただ一人、海岸部の白子地区が地元である点も前面に出し、津波防災対策を訴えて支持拡大を目指す。

 無所属で新政みえ推薦の彦坂さんは、顧問を務めるホンダ労組が全面支援する。新人だった前回、他候補が出馬した前々回ともに得票は一万六千を超え、安定した支持基盤を持つとされる。ただ陣営は「ホンダ社員、関係企業ともに数は減っており、二千票以上積まないと前回に届かない」。ホンダOBや二次、三次下請け企業の社員にも訴えを広げ、支持の広がりを目指す。

 自民は前回、二期連続でトップ当選だった末松則子さんが無所属で鈴鹿市長選にくら替え出馬。一人のみの擁立となった小林さんは、県内でも最も多い二万六千七百票余を得てトップ当選し、二番手を一万票以上引き離した。二議席の奪取を目指す今回は、ともに票の食い合いを懸念。「国とのパイプには、自民の県議が必要」と訴える。

 衆院議員秘書、元市議という経歴の小林さんは衆院選への出馬経験もあり、知名度が高い。選挙戦では教育、防災、福祉の充実などを公約に掲げる。市内一円の自治会や中小企業、業界団体、幼稚園などの百九十団体から推薦を得た。うち百十団体を新規に増やし、地盤固めを進めた。ただ陣営は「前回のような得票はありえない」と、楽観ムードを戒める。

 伊藤さんは、元県議の多喜夫さんを父に持ち、市中央部の西条、神戸、飯野地区などが基盤。ただ「父の知名度は高いが、引退して時がたち、支援者は世代交代している」と、票の掘り起こしに力を入れる。自身が介護支援専門員で、妻も子育て支援のNPO法人理事長を務めることから福祉、子育て施策の充実を重点的に訴え、幅広い世代への浸透を図る。

 一方、政党の推薦を受けない無所属の南条さんは前回市議選で四千三百票余を得て三位当選した。政治信条は保守色が強く、五十〜七十歳代を基礎票に持つ。「これまでも特定の組織や地域の支援を受けていない。支持なし層を取り込みたい」と陣営。選挙カーでの街宣を中心に市議三期十二年の実績を訴え、既成政党への批判票の取り込みを狙う。

◆現新一騎打ち 亀山市区

伊藤彦太郎45 無新

長田隆尚54 無現<2>

 定数一をめぐる無所属の現職、新人の一騎打ちは、三期目を目指して支持固めを進める長田さんを、関町出身で元市議の伊藤さんが懸命に追い掛ける展開だ。

 長田さんは民主・連合系会派「新政みえ」を離脱し、中立を掲げる一人会派を立ち上げた。過去二回の選挙で受けた連合三重の推薦を今回は受けない。街宣や個人演説会では「住民への県政報告会で拾い上げた要望を実行に移す」と強調。商工会の企業・団体の支持が厚く、主婦層への支持拡大も狙う。

 伊藤さんは関町の住宅団地や安坂山町の集落を歩いて回り、街頭演説を展開。県議会の定数削減を訴えるほか、選挙区各地の要望を反映できる県政への改革を主張。個人演説会も開いている。シャープ亀山工場もある白木町を重視して支持固めを進める一方、市内全域への支持拡大も目指す。