三重

<県議選 激戦区ルポ>(2)

2015年4月8日

◆3議席を5人で争う 伊賀市区

木津直樹 55 自新

稲森稔尚 31 無新

森野真治 45 民現<2>

粟野仁博 41 自現<1>

森口あゆみ49 無新

 前回選よりも候補者が一人増え、県内屈指の激戦区になった。現有議席を死守したい自民、民主に無所属の二人が挑む。

 自民は二〇〇四年の市町村合併以降も、旧上野市と旧郡部にそれぞれ県議を擁立してきた。旧郡部は引退する岩田隆嘉さんの後継に木津さんを立て、旧上野市を地盤とする粟野さんが再選を目指す。民主は三期目を狙う森野さんに支援を結集し、議席を堅持する構えだ。

 そこに風穴を開けようと、昨年末に元社民党県連代表の稲森さんが立候補を表明。二月には元県議長の田中覚市議が支援する森口さんが名乗りを上げた。

 稲森さんは過去二回の市議選をトップか二位で当選。前回、前々回の県議選で落選した田中市議は当選まで千百〜二千六百票に迫る票を得ており、自民は新人二人を警戒する。伊賀は昨年末に十一選を果たした川崎二郎衆院議員の地元だけに、粟野さんの陣営幹部は「お膝元で議席を減らすことは許されない」と表情を引き締める。

 粟野さんはベテラン市議らの協力を得ながら、人口の六割が集中する地盤の旧上野市を精力的に回る。告示後は一日十回ほど街頭演説を繰り返し、医療や農業、スポーツ振興などをテーマに訴える。妻も街頭で市議や支援者と声をからし、個人演説会では涙を浮かべて支援を呼び掛ける。

 木津さんは二月中旬から地元の阿山地域で座談会を重ねてきた。岩田さんの地盤を引き継いで旧郡部を回り、農業や医療の再生を訴える。五日には女性中心の演説会に吉川有美参院議員と川崎衆院議員の妻が登壇。「この地域を地盤とする議員が出ることは重要だ」と支持を求めた。

 連合三重の推薦を受ける森野さんは二月から街頭などに立ち、支持拡大に懸命だ。反自民票が無所属の二人に流れることを警戒し、「攻め込みが激しい」と危機感を強める。二回連続で一万四千票余を得てトップ当選を果たしたが「安心されるのが一番怖い」と連日、個人演説会をこなす。

 稲森さんは大政党や組織の後ろ盾がないことをアピールし「組織対草の根の戦い」と訴える。支持なし層への浸透を目指し、子育て世代であることも強調。地盤の旧伊賀町を固める一方、元日から旧上野市の市街地でつじ立ちをし、旧青山町長の支援を受けるなどして支持拡大を目指す。

 森口さんは伊賀市選挙区で初の女性候補。告示前は約二百五十カ所で街頭演説に立ち、知名度アップを図った。女性としての視点を強調する一方、政務活動費の透明化を訴え、現職議員の使い方の是非を追及。田中市議の支持層を固めつつ、女性票や現職への批判票の取り込みをうかがう。

 告示翌日の四日、ある祭りの会場には四候補がさみだれ式に現れた。バッティングした新人二人は互いに距離を保ちながら会場を駆け回り、有権者とがっちり握手を交わした。自民は川崎衆院議員が投票日直前まで地元に入り、引き締めと支持拡大を図る構えだ。ある現職陣営の関係者はこうつぶやいた。「新人の票がどう動くかわからない。必死になるしかない」