三重

<知事選立候補者 座談会>(中)どうなる暮らし

2015年3月30日

 −住民の暮らしや中小・零細企業を守るための景気対策をどう進めるのか。

 鈴木 「アベノミクスで大企業や輸出系企業はもうかったが、地域の中小、小規模企業はまだ実感が伴っていない。一時的な景気対策でなく、中小・小規模企業の経営力向上と人材育成が大切だ。昨年始めた相談所『よろず支援拠点』は半年間で千五百件の利用があった。事業承継、第二創業も促進する。短期的ではあるが地方創生の交付金で消費動向も上昇させる」

 藤井 「アベノミクスの効果は浸透しておらず、県の政策を変える必要がある。中小企業の支援策としては、最低賃金引き上げのために保険料負担の軽減が必要だ。地域の商店街を守るために、大型店の進出に一定程度の規制をかける。福祉や医療を支えることで、『貯金しなければ暮らせない』、今の状態を変えていく。一人一人の懐を豊かにすることが本当の景気対策だ」

 −社会保障の充実に向け、さらなる消費税率の引き上げは必要か。

 藤井 「消費増税には反対だ。5%に戻すべきだと考える。増税した分のほとんどは、企業減税に回っているだけで、社会保障には使われていない。増税で県の税収は百二十六億円増えたようだが、福祉に充てる民生費は、わずかしか増えていないようだ」

 鈴木 「従来は消費税を上げる際に所得税減税などの対策を講じてきた。引き上げなら効果的な経済対策もやってほしい。軽減税率は導入すべきだ。社会保障が充実したと実感できる制度設計も求めたい。百二十六億円は大半が市町への交付金で、県税収入が増えたわけではない」

 −どんな医療・介護・福祉政策を進めるのか。

 鈴木 「人口十万人当たりの県内医師数は百九十七人に増えたが、道半ばだ。二〇二五年の目指すべき医療提供体制を示した地域医療ビジョンをつくる。医師を確保し、地域偏在を是正する。特別養護老人ホームの待機者解消と、シニア層を生かした介護人材の確保にも取り組む」

 藤井 「介護報酬が大幅に引き下げられたため、経営できない事業所が出てくるおそれがあり、行政の責任で一定の助成が必要だ。県内には特別養護老人ホームの待機者が多く、介護保険料を払っている人が施設に入れる態勢をつくる。医学生の奨学金の充実も必要だ」

 −どんな自然災害対策を進めるのか。また、原発再稼働は必要か。

 藤井 「東日本大震災の教訓を生かすためには、消防職員の充実が必要だ。もちろん堤防、福祉避難所などのハード面の整備も大事だ。原発の再稼働は必要ない。浜岡原発は廃炉にすべきだ。値上げされた電気料金は電力会社の企業努力で、もっと下げる必要がある」

 鈴木 「地震・津波と風水害、石油コンビナートの防災計画を策定したので、しっかり実践する。海抜ゼロメートル地帯対策や、土砂災害危険箇所での基礎調査前倒しなども進める。原発の再稼働は地方の同意を丁寧に得てほしい。改定した県地域防災計画には原子力災害対策も盛った」

 −いじめ問題や学力向上をはじめとする教育行政の課題の解決に向け、首長の関与は強めるべきか。

 鈴木 「教育行政における政治的中立性・公平性を保つことは大前提だが、県民の負託を受けた首長の関与が広がるのは意義あることだ。教育は地方創生や人口減少問題と直結している。危機管理の観点からも首長の関与はいいことだと思う」

 藤井 「基本的に首長が関与する必要はない。いじめ問題には子どもの内面に向き合える体制づくりが大事だ。小学校の三十人学級や中学校の三十五人学級、常勤の臨時教員の正規教員化などを進める。(テストの)点数を上げるための無理な教育は必要ない」