三重

<知事選立候補者 座談会>(上)人口減対策と活性化

2015年3月29日

各テーマの考えを述べる藤井新一さん(右)と鈴木英敬さん=津市内のホテルで

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 4月12日投開票の知事選に向け、中日新聞社は告示の直前、立候補した現職の鈴木英敬さん(40)、新人の藤井新一さん(56)を招いた座談会を開いた。県政への情熱をぶつけ合った2人。県の未来を占う論戦の模様を、「人口減対策と活性化」「どうなる暮らし」「今後のかじ取り」の3回に分けて詳報する。

 (座談会は22日、津市内のホテルで実施。聞き手は末次秀行三重総局長)

 −政府が進める「地方創生」への考えは。少子化対策をどう進めるのか。

 鈴木 「人口減少と地域の衰退を繰り返す負のスパイラルを止めるのが喫緊の課題だ。人口の自然減対策では結婚や妊娠、子育てなどの段階ごとに希望がかなう少子化対策を進める。学び、働き、暮らしたいと思える県にするための社会減対策も進める。二〇一五年度中に分析を踏まえた人口ビジョンと、処方箋の『総合戦略』を策定する」

 藤井 「都会に若者が流れていくことが大きな問題で、若者が働く場を確保していくことが大事だ。最低賃金を千円に引き上げ、子どもや障害者などの医療費窓口無料化を進める。無利子の奨学金制度もつくりたい。ブラック企業対策として、サービス残業や長時間残業をただせば雇用は増える。若者が生活できる施策を進めていく」

 −どんな産業振興策を進めるのか。

 藤井 「成長が見込まれる分野に対する特別な助成は必要ない。例えば、九十億円が投じられたシャープ亀山工場は、期待ほどの雇用効果がなかったと聞いている。助成した企業が、グローバル化や経営悪化に伴って県外に出るのは困る。県の予算で中小企業と農業などの地域産業をしっかりと支えていくことが大事だ」

 鈴木 「実質ベースの県内総生産が過去最高を記録し、倒産件数は過去二十年で最少になるなど、一定の成果は出ている。北勢地域のコンビナート再生を含む新たな高度部材の産業戦略や、小規模事業者を支える食の産業振興を進める。新観光計画もつくる。現在の倍となる二十五万人の外国人観光客を呼び込み、観光消費額を増やしたい」

 −農林水産業は担い手不足や価格低迷に直面している。TPP交渉、農協改革といった課題もある。

 鈴木 「県産米のブランド化や加工・業務用野菜の産地育成など、農家がもうかるようにする。茶や牛肉も輸出する。水産王国復活に向けたビジョンもまとめ、県産材は輸出を促進する。TPPは国益にかなう交渉と国民への丁寧な説明を望みたい。農協改革は現場に混乱がないように」

 藤井 「再生可能エネルギーと農山漁村のコラボレーションが考えられる。担い手不足に対応するため、一定の所得補償が必要だ。価格が暴落する米の価格補償も必要になる。TPPは農業や雇用、医療に悪影響があり反対だ。政府の強硬な介入による農協改革にも反対する」

 −鈴木さんは先進国首脳会議(サミット)の県内誘致を表明した。

 藤井 「誘致は反対だ。一定の経済効果はあるが、一時的ではないだろうか。民間のホテルを整備しても、その後はどうするのか。一部に大きな利益がいくだけだ。インフラ整備の過大な投資や過剰な警備で、他地域の住民や産業、観光に大きなマイナスがあると思う」

 鈴木 「国際観光地として県がレベルアップするのに重要だ。数億円の予算がかかるが、ほとんどが地域に残る警備力のための予算で、地域に還元される。一過性にしないことが大切。期間中の市民生活への影響を最小限に抑えられる場所を選んだ。新たな投資がない形で開く」