三重

<解説>展望切り開く論戦を

2015年3月27日

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の恩恵が浸透していない地方経済の立て直しや格差是正に加え、人口減少対策を含めた地方の再生が論点となる今回の統一地方選。知事選に立候補した二氏には将来の展望を切り開く、具体性に富んだ論戦を期待したい。

 突然の解散による戸惑いと、従前の組織力が自民の圧勝をもたらした衆院選から四カ月が過ぎた。共産推薦の新人と、自民と公明、新政みえが推薦する現職が激突した今回の知事選。四月三日には県議選も告示を迎える。いずれも地域の課題を論じる地方選挙とはいえ、あらためて自らの意思を政治につきつける絶好の機会だ。現状に甘んじることなく、候補者を主体的に見極める良識を問われているのは私たちにほかならない。

 産業振興に教育、防災対策、医療・福祉・介護問題…。県が抱える課題は多分野に及ぶが、とりわけ優先度が高いのは、人口減少社会を正面から見据えた地方再生への取り組みだ。

 民間団体「日本創成会議」が、若い女性の減少で二〇四〇年に消滅する可能性があるとした「消滅可能性都市」は、県内市町のほぼ半数に上る十四市町が該当する。県が将来人口を展望した「人口ビジョン」の骨子案でも人口の大幅減は免れない。

 一方、長年積み上がった県の借金はいまだ多額に上る。新リーダーには厳しい台所を切り盛りしつつ、持続可能な地域づくりと財政再建を両立させる「豪腕」が不可欠だ。加えて、同様の課題を抱える他地域との競争に打ち勝つには、明確なビジョンも欠かせない。

 夢あふれる地域の将来像を聞くのは耳に心地よい。しかし本当に求められているのは、地に足のついた発展への知恵だ。

 (相馬敬)