三重

県議会「先進」改革も関心低く

2015年3月16日

本会議の一般質問で執行部をただす議員たち(手前)。議論は白熱、でも県民の関心は?=県議会議事堂で

写真

 4年に1度の改選を控えた県議会。実は、ある研究機関の議会改革度調査で2年連続全国1位に輝くなど、地方政界では先進的な議会として一目置かれている。ただ、その成果は県民の暮らしにどれだけ役立っているのだろう。4月12日投開票の県議選を前に考えてみた。

 全国各地の議会名がずらりと並んだトップに、「三重県議会」の文字が踊る。早稲田大学の研究機関「早稲田大学マニフェスト研究所」(所長・北川正恭元三重県知事)が都道府県、市区町村合わせて千四百四十四議会から回答を得た二〇一三年度の議会改革度調査の結果だ。

 約七十項目の質問を「情報公開」「住民参加」「議会機能強化」の切り口に分けて採点し、順位を付けた。三重は一二年度から二年連続の一位。研究所の中村健事務局長は「どの項目も非常にバランス良くできている」と太鼓判を押す。

 一三年に導入した通年制は先進例の一つとされる。年数回に区切って定例会を開くのが一般的な中、通年制には年間を通じて閉会期間がない。このため、自然災害などの緊急時にもすぐ集まり、執行部の対応に問題があればただせる。昨年視察に訪れた大分県議は「三重は進んでいるイメージが強い」と感心する。

写真

 当の議員たちは鼻高々だろうと思いきや、複数の議員から「実感が湧かない」との意外な反応。なぜ?

 年二回、県内各地で開かれている「みえ現場de県議会」では、子育て支援や観光振興などの課題をテーマに、県民や関係者と意見交換をしている。現場の声を県政に届ける狙いだが、毎回出席している大久保孝栄県議は「支持者に尋ねても、会の存在すら知らないこともある。関心は低そう」と漏らす。

 号泣会見で一躍、有名になった元兵庫県議による不正支出で、見直し論が噴出した政務活動費。三重県議会でも一人当たり年間約三百十七万円が支給され、ボーナスを含めて年間約千三百八十四万円の議員報酬もある。当然、納税者の目は厳しくなる。

 ただ、ある県議は「落選した場合に備えて、報酬は蓄えにもかなり回しており、やりくりは決して楽ではない。なのに、県民には理解されない」と嘆く。

 開かれた議会を目指しているのに、なかなか縮まらない県民との距離。三重大副学長の児玉克哉教授(地域社会学)は「県議会の取り組みは内部の制度改革にすぎず、本質的ではない」と指摘する。

 その上で、議会改革のカギは、議員自らが条例を制定する立法権の活用にあると訴える。「首長一人ではくみ取れない多様な住民の声を拾い上げるのが議員の仕事。その声を条例として形にできれば、政治への関心も高まる」

 冒頭の議会改革度調査に「この十年間で議員が提案して制定された政策条例の数は?」との質問がある。県議会の回答は「八」。この四年に限れば二件しかない。ただ、全国的に「ゼロ」が多いため、それでも進んでいるようだ。

 専門分野が異なり、人数も限られた議員が一つの条例を作り上げるのは簡単ではない。現状の数を多いとみるか、少ないとみるか。その意識の差が、改革が有権者からも評価されるか否かの分岐点になるかもしれない。

 (添田隆典)