三重

<鈴木県政の4年>(下)情報発信に注力

2015年2月27日

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 「企業誘致件数は二百件以上」「紀伊半島大水害からの復旧は100%」「都道府県別の経済成長の中期予測は第一位」…。四月の知事選に再選を目指して出馬する鈴木英敬知事。新たに作成した後援会のしおりには、一期目に進めた取り組みの達成状況が並ぶ。

 「三重県を積極的にアピールしている」。県議や市町長が評価するのは情報発信への姿勢だ。トップセールスを重ね、公約通りに東京・日本橋に首都圏営業拠点「三重テラス」を開業した。

 霞が関をよく知る元官僚として、粘り強く要望を重ねる「正攻法」も展開。ブラジル人のビザ要件緩和などを勝ち取った。国の交付金を活用できる「地域再生計画」に食、航空宇宙産業の計画二件が新たに認定されたが、複数の認定を受けた都道府県は三重県のみ。現政権との親和性の高さを示した。

 前回選の目玉公約の一つだったのが総人件費の二割削減だ。二〇一一年六月、自らの給与カットを県議会に提案し、月給の30%、ボーナスの50%を削減。一期四年当たりの退職金もゼロにした。鈴木は今年二月の会見で「総人件費の19・9%を削減。県債(借金)残高も減少に転換した」と胸を張った。

 二〇一三年には伊勢神宮の式年遷宮を迎え、一三年度の神宮への参拝者数や観光入り込み客数、外国人宿泊者数などは軒並み過去最高になった。

 ただ、鈴木自身は観光振興を「道半ば」と表現する。「情報発信頼みだった。人材育成や販路開拓、商品開発といった『観光の基幹産業化』に取り組まねばならない」と課題を口にした。子どもの学力向上や少子化対策、医師・看護師の確保対策などといった重要施策も、同様に課題が残ったと述べた。

 鈴木のかじ取りにはむろん、異論も根強い。共産の推薦で立候補する藤井新一は会見で「三重県の人口あたりの医師数は全国三十七位。医療・介護の分野が遅れている」と指摘。障害者、子どもの医療費窓口負担の無料化や特別養護老人ホーム(特養)の整備に意欲を示した。

 藤井は「若い世代の非正規雇用も問題だ。正規職員でもサービス残業が横行し、官製ワーキングプアの問題もある。雇用問題を大きな争点にしたい」とも強調し、「ブラック企業規制条例の制定は可能。労働局と連携し、若い人が安心して結婚・子育てできる県にしたい」と意気込みを語った。

 鈴木の四年間の歩みに対し、県議会からは評価の一方で「失点は少ないが、大きな成果もない」「結果が出ていない政策もある」との批判もある。

 後援会の新しいしおりには、こんなくだりがある。「知事の大事な仕事は、みんなの力を合わせること。音を奏でるのは皆さんで、私は指揮者のようなもの」。新たなタクトの振り手を決める知事選は、三月二十六日に幕を開ける。(敬称略)(この連載は相馬敬が担当しました)