三重

<鈴木県政の4年>(中)「県民党」の真意

2015年2月26日

後援会本部の事務所開きで来場者と握手を交わす鈴木英敬知事(中)=津市内で

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 「すべての政党・団体とも政策協定は結ばない」。昨年十一月、再選出馬を表明した鈴木英敬知事。記者会見では政治的スタンスとして「県民党」を強調したが、最後に異例のひと言を付け加えた。

 前回選で支援した政党や団体には「筋を通すため」推薦を依頼するが、「四年間の評価を踏まえ、他の政党・団体とも個別に相談させてもらいたい」とも述べた。

 昨今の知事選は無所属での出馬が主流。複数の政党や団体の推薦を受けて選挙戦に臨むことが多い。その際には、基本姿勢や政策面で共同歩調を取るために「政策協定」を取り交わすのが一般的だ。盛り込む項目は行財政改革や医療・福祉、教育など複数の分野にわたる。

 「政策協定を結ばない推薦(の協議)は初めて。どんな形にするかを内部で議論する」。今月十八日、鈴木と面談した連合三重の土森弘和会長は、困惑を隠せない様子で語った。これまでは民主党県連、新政みえとの「三重県方式」で候補者を擁立し、県内政界での影響力を保ってきた連合三重。土森は「組合員が蚊帳の外になる状況は避けたい」と、推薦に前向きな姿勢を示してきた。

 しかし、鈴木は土森との面談で「次の四年間も県政のパートナーとしてお願いします」と述べたが、自ら推薦を依頼することはなかった。民主の芝博一参院議員、維新の松田直久衆院議員とも接触したが、同様に推薦は申し入れなかった。

 玉虫色とも、強気の表れとも受け取れる行動の真意は何か。この面談の翌日、鈴木は会見で「財政の硬直化が進む中、県民のニーズもさまざま。できる限り機動的な政策運営をしたい。政策協定を結び、約束を実現していくのは避けたい」と言及。「選挙実務と、幅広く政策を実現させる県政運営はイコールではない」とも言い切った。

 ただ、公明と推薦を決めた自民の見方は少し異なる。ある県連幹部は「非自民勢力が擁立した野呂昭彦前知事と違い、鈴木の『出生地』は自民。生まれ故郷に配慮して自ら依頼はしなかった」とみる。

 「民主王国」と称された県内政界。しかし、二〇一一年に自民と公明、みんな(当時)が支援する鈴木が勝利してから潮目が変わった。県議会では新政みえが第一会派だが、自公などのタッグの前に議長、副議長ポストを失っている。

 民主は今回、強気の主戦論が広がらず、候補擁立を断念した。新政みえのベテラン県議は「鈴木知事は自公に軸足を置くが、言うことは県民党の立場だ。われわれの主張にも柔軟に対応しており、そこは評価せねばならない」と鈴木への支持、不支持で揺れる胸中をのぞかせる。

 市長、町長の間では鈴木を支持する声が多い。十一日の後援会本部の事務所開きは、代理を含めて二十一人が出席し、鈴木とのつながりをアピールした。

 前回選では一部の首長が政治集団「日本の原点」を設立、対立候補の前津市長を支援した。しかし、中心人物の田中俊行四日市市長は会見で「魅力発信に多大な貢献をした」と鈴木県政を評価。選挙での支援を問われると「高く評価しているということで想像して」と語った。

 県民党への異論も出た自民への配慮を怠らない一方、特定の政党色を無理のない形で薄め、幅広い支持の受け皿となる−。それが鈴木が思い描く、勝利へのシナリオと言っていい。(敬称略)