岐阜

手も回らず、足も届かず日本一広い市・高山の市議選運動

2015年4月21日

残雪の中に設置されたポスター掲示板。15分ほど待ったが、人の姿はなかった=高山市高根町野麦で

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 二十五人が立候補した高山市議選(定数二四)で、候補者たちが広い選挙区に頭を悩ませている。十年前に周辺町村と合併して日本一広い市となり、面積は東京都全体とほぼ同じ二千百七十七平方キロメートルもあるからだ。

 「一週間で全部を回りきれるわけがない」。新人候補の陣営幹部の男性が、ため息交じりに漏らした。市域は東西八十一キロ、南北五十五キロ。この候補は市中心部出身で、「支所地域(旧町村)は捨てる。ポスターは貼るが街宣カーは行かない」。人口の多い旧市内での得票を狙う作戦だ。

 現職候補の一人は、選管が設置した市内四百二十三カ所のポスター掲示板を効率よく利用するため、別の五陣営と話し合い、互いのポスターを貼り合ったという。陣営幹部の男性は「協力しないと、全部は貼れない」と話す。立候補受け付けから丸一日以上たった二十日も、一部候補のポスターがまだ張られていない掲示板が目につく。

 「私の出身地域では、他の候補はほとんど見かけない」と話すのは、旧町村地域を地盤とする別の現職候補。市民の七割が住む旧市内に比べ、旧町村地域は選挙活動しても効率が悪く、敬遠する候補者も多いという。

 一部陣営のこうした作戦には、過疎地域の有権者から不満の声も漏れる。人口三百六十人余の高根町内に住む農業男性(61)は「選挙カーは毎回二、三人を見かける程度。全員の話を聞いて投票したいのに」。市役所から約五十キロ離れた長野県境の野麦峠近くに住む無職男性(76)は、残雪を見つめながら「選挙カーなんて見たことない。おれらは選択肢が少ない」と話した。