岐阜

<未来のために 白川村の課題>(下)ホテル誘致

2015年4月19日

平日でも観光客でにぎわう合掌集落。特に海外からの団体客が多い=白川村荻町で

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 「ホテル誘致反対」「白川郷にホテルができる! あなたはどう考える?」。二年前、世界遺産の合掌造り集落がある荻町に、こんな張り紙が各所に掲示された。雇用創出や観光による経済効果のアップを狙い、村が進めたリゾートホテル計画に対し、村内から強い反発が起きた。

 二〇一二年の議会で村はホテル誘致を発表し、翌年から住民説明会や座談会を開いた。荻町から約三キロ離れた大牧地区に約百人が泊まれる施設を建設する計画だった。合掌集落の民宿経営者を中心に反対運動が繰り広げられたほか、資材費の高騰なども影響し、計画は“凍結”状態となったまま。ただ、村側は諦めておらず「村民との議論を続け、誘致は必ず達成したい」と意欲的だ。

 昨年度に村を訪れた観光客は百五十万一千人。円安による外国人観光客の増加などで、前年より4・8%増えたものの、その大半が日帰り客。宿泊者数は七万六千人と全体の約5%にすぎない。

 宿泊は各宿でも受け付けるが、宿を一括掲載する白川郷観光協会のホームページから申し込む客も多い。村内の民宿は四十ほどあるが、人気の集まる荻町内に限るとその約半数。観光協会職員は「ここは宿泊施設数が少ない。特に休日はかなり前から予約で埋まるので宿を用意できないこともある」といい、ホテル誘致の行方は気がかりだ。

 観光シーズンが本格化した今月、大阪府茨木市から荻町を訪れた五十代女性の二人組に聞くと、宿は高山市内のホテル。「旅行会社のパンフレットを見て決めたが、白川郷の宿はあまり載っていなかった。ホテルの方が慣れているし、快適なイメージもある」

 一方、荻町内で合掌民宿を経営する男性は「人と触れ合うことができ、地元の良さが伝わる」と魅力をアピール。「客のほとんどが外国人。よく勉強しているし、文化に詳しい人もいる」とも。ホテル誘致には反対で「やっぱり村民の稼業と競合することはやっちゃいかんよ」という。

 村はホテル以外にも「白川郷ブランド」認定制度を一月に始め、地元産の土産を増やす試みや、白山、大白川といった自然を利用した観光PRにも力を入れる。北陸新幹線延伸で、今後の観光客増も期待されるだけに「せっかく人が来ても泊まるところがなければ」と村側はホテル誘致の必要性を強調する。

 村の未来のため、どのように住民の理解を得ていくのか。新しいリーダーは難しい選択を迫られそうだ。

 (片山さゆみ)