岐阜

高山陣屋周辺の街宣自粛名人戦に配慮、候補者困った

2015年4月16日

投票のお願いをする県議選候補者(右手前)。高山陣屋前は選挙活動の定番スポットだ=11日、岐阜県高山市で

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 十九日告示の統一地方選後半戦の岐阜県高山市議選で、選挙期間中の二十二、二十三日に市中心部の観光名所・高山陣屋で開かれる将棋の名人戦第二局に、候補者たちが頭を悩ませている。羽生善治名人(44)らに勝負に集中してもらおうと、議会は半径三百メートル以内での拡声器の使用自粛を申し合わせたが、陣屋前は街頭演説の定番スポット。候補者からは「選挙の勝敗への影響が大きい。日程がずれてくれれば良かったのに」との声が漏れる。

 高山陣屋は防音環境が整っておらず、拡声器を使っての演説は対局者に丸聞こえ。これを知った議会は三月の議会運営委員会で、対局日の拡声器の使用自粛を申し合わせた。ウグイス嬢らの声を発しながらの選挙カーの運行も自粛する。引退を表明している島田政吾議長(69)は「市のイメージアップのためにも全員一致で決めた」と話す。新人候補には、市議会事務局が事情を説明した。

 高山陣屋管理事務所の宇津宮清和所長(54)は「観光都市であることを最大限に考えてくれた」と感謝するが、候補者からは困惑の声も。今のところ、定数二四に二十五人が立候補を予定。陣屋前では朝市が毎日開かれ、地元の買い物客も訪れるため、選挙戦では多くの候補者が街頭演説をするとみられる。統一選前半戦の岐阜県議選高山市選挙区(定数二)でも、候補者の三人全員が演説した。

 市中心部を地盤とする現職候補は「非常に影響がある。防音設備の優れたホテルでやればいいのに」と言い、別の現職候補も「この選挙区の重要拠点なので痛い。事情が事情なので、反対するわけにもいかない」。新人候補は「人の多い所でアピールする機会が減り、現職が有利になるのでは」と疑問を投げ掛ける。

 対局を誘致した県の文化振興課によると、県内での名人戦は三十三年ぶりで、高山での開催は初。本年度七百万円の予算を計上した上、名人戦の準備期間を含む三日間は観光客が入場できず収入も減るが、「高山の観光や、県が運営する高山陣屋を強くアピールしたかった」と狙いを説明する。

 今回の自粛はあくまで申し合わせで、公職選挙法の規制は受けないが、現職候補の一人は「無視して演説したらひんしゅくもの。逆に票が減りそう」と懸念する。別の現職候補は「握手や電話、インターネットなど別の作戦を練らないと」と話している。

 高山市議選の投開票は二十六日に行われる。

 (高山支局・清水裕介)

 <高山陣屋> 国指定史跡。もともとは高山城主・金森氏の下屋敷で、飛騨国が幕府の直轄領となった江戸時代は役所として使われた。明治以降も1969(昭和44)年まで、高山県庁舎など地方の役所として機能した。管理事務所によると、全国で唯一残っている郡代・代官所の建造物。