岐阜

<攻防 県議選>(4)瑞浪市選挙区

2015年4月10日

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 「初心に帰り、我欲を捨ててしっかり仕事をしたい」。五選を目指す渡辺は、個人演説会で声を振り絞った。応援に駆けつけた瑞浪市長の水野光二は「厳しい選挙だ」と、四度同じ言葉を叫んだ。

 瑞浪市選挙区(定数一)は、自民党県連副会長の渡辺と、自民を離党した元党支部幹事長で元市議長の山田という、長く市の自民を支えてきた二人の一騎打ち。対決の遠因となったのが四年前の前回県議選だ。

 山田はいったん出馬表明したが、周囲の説得で取りやめ。渡辺は無投票で四選を果たし、議長も経験した。「いま当選すれば、十年はできる」と再び出馬を目指した山田に対し、渡辺も「議長を経験した後こそ、最も力を発揮できる」と出馬を決断。山田は党県連から離党を勧告され、受け入れた。

 自民は今回の県議選では、この選挙区を含む八つで新旧交代や地域間調整の不調などから分裂選挙に突入。危機感をいだいた党県連は、離党した候補を支援する党員に対し、二度と復党できない除名処分まで突きつけた。

 このため、渡辺の出陣式には市長に加え、自民系市議十三人全員が顔をそろえたのに対し、山田側には一人の市議の姿もなし。山田の同僚市議の一人は「割り切るしかない」と自分に言い聞かせた。表面上は、引き締めが功を奏しているようにも映る。

 それでも渡辺陣営が「厳しい」と繰り返す。「市議や経営者が号令をかけたら大量に票が入るという時代じゃない」と自民関係者。山田を心情的に支援する層が本当に渡辺に票を入れてるのか読み切れないからだ。

 桜並木の下、女性花見客に小走りで駆け寄った山田が、笑顔で握手を繰り返す。「大きな声では言えんけど、あんたを応援しとるでね、と声をかけてくれる人も多い」と、手応えを口にする山田。

桜の下で有権者に支持を訴える候補者=瑞浪市内で

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 共に保守で政策的な違いが見あたらない中、山田は、七十三歳の渡辺と六十歳の自身の年の差をPR。「世代交代が必要」と訴える。

 これに対し、渡辺は二月の市議選で二十代や三十代の当選者が出たことを引き合いに、「引き継ぐなら有能な若者。候補を探すため、四年をいただきたい」と切り返す。

 過熱する選挙戦。自民支持層からは、こんな声が漏れる。「どちらが勝っても、わだかまりは残る。戦いが激しくなるほど解消に時間がかかる」

 =敬称略、終わり

 (統一地方選取材班)