岐阜

<攻防 県議選>(3)岐阜市選挙区

2015年4月9日

写真

 とにかく手を握る。握手、握手、握手。自民新人の広瀬は、あいにくの雨に見舞われた地元の祭りに姿を見せた。「いつもご苦労さまです」「頑張ります。よろしくお願いします」。行き交う祭り客に頭を下げるたび、水滴がしたたり落ちた。

 定数九に十二人が立候補した岐阜市選挙区。保守系の複数の幹部は口をそろえる。「立候補した十二人のうち、保守系が七人。厳しい保守票の奪い合いだ」

 十人が出馬した四年前の前回選では、保守系候補は自民と元自民無所属の計四人。それが今回、自民だけで現職の玉田と長屋、新人の若井と広瀬の四人。ここに元自民で無所属の現職道家と元職笠原が加わり、さらに父が元自民県議の無所属新人平野も立つ。

 今回、自民の看板なしで戦う道家は、「票が減るのは覚悟している」。地盤の市南部では、広瀬と保守票を食い合う。そこで知人を頼り、市北西部の島地区で初めて個人演説会を開催。「自分は(市南部の)茜部の人間だけれども、島でもしっかり働かせてもらう」と、大きな体を縮めて支援を求めた。

 これまでは、自民の候補は互いの地盤には攻勢をかけず、すみ分けるという不文律があったという。しかし今回は、告示前から多くの陣営が一票をたぐろうと、地盤を越えて街宣車を走らせる。

 「知られているのは父親ばかり。『トモヒサ』を売り込まないと戦えない」。市内全域に戦線が拡大する中、父親の地盤を引き継いだ平野も危機感を強める。

雨の中、祭り会場を訪れカッパ姿で握手を求める候補者(左)=岐阜市で

写真

 一方の他党陣営。民主、公明が各二人、共産は一人を擁立し、前回選と同じ議席数の確保を狙う。ただ、こちらも安穏としていられる状況にはない。

 前回は次点とわずか九十三票差で滑り込んだ民主現職の渡辺は、「民主政権下だった前回とは、わけが違う。非常に戦いにくい」と厳しい表情。雨の中、大型ショッピングセンターの前で「給料が上がっているのは、大企業のサラリーマンだけ。地域から日本を変える」と必死の形相で訴えた。

 もう一人の民主現職太田も、上向かない党勢を盛り返そうと、連合のバックアップを得て懸命の選挙戦。公明の現職水野と新人澄川、共産の新人中川は、強固な党組織に支えられるものの、保守の激しい競り合いに警戒感を募らせる。

 三人が落選する激しい選挙戦の行方は、最後まで予断を許さない。

 =敬称略

 (統一地方選取材班)