岐阜

<攻防 県議選>(2)関市選挙区

2015年4月8日

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 「市長になってこの三年半、議員には知事への連絡や県各部への要望などで、大変お世話になった」。雨が降る三日朝、関市中心部の本町通商店街で行われた自民現職の酒向の出陣式。駆けつけた尾関健治市長があいさつをすると、支持者からわっと拍手が沸き起こり、壇上から降りた尾関に酒向が歩み寄って、がっちり握手してみせた。

 関市選挙区(定数二)は、前回は酒向と無所属の林の現職二人が無投票当選。しかし今回、元市長で自民元職の尾藤が加わり、十二年ぶりの選挙戦となった。いずれも実績を背景に後援会や支援団体の引き締めと拡大に力を入れるが、勝敗を左右しかねないのが、市長の尾関を支持する層の動向だ。

 二〇一一年九月の市長選で、三十九歳の若さで初当選した尾関は、今も市民から幅広い支持を受ける。その時に戦った相手が、尾藤。そして、尾藤の選対本部長を林、副本部長を酒向が務めた。

 今回立つ三候補全員が、当時は反尾関陣営。尾関本人は「政治の世界では普通のこと。自分には遺恨はない」と話すが、支援者からは「今回、誰に投票したら良いのか」との声も漏れる。

 それだけに、三陣営とも尾関との関係に気を配る。

現職候補の出陣式に出席した尾関健治市長(右)=関市で

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 酒向は個人演説会でも、市と県のパイプ役として尾関と良好な関係にあると積極的にPR。「市長と同じ方向を向いている自分にしか、この役目はできない」と力を込めた。

 林も「前回市長選時の状況は、尾関市長も理解してくれている」とした上で、「市長とは、これまで一緒になってやってきた実績がある」と訴える。さらに、民主党の県連幹事長代理として「無所属だが、党の活動は誰よりもやっている自負はある。十二年前の自民独占の状況にしてはいけない」と支持を求める。

 そして尾藤。市長選では尾関と直接対決しただけに、対立のイメージは根強いが、陣営幹部は「しこりはない。これからどう連携していくかが大事」と強調する。

 つかの間の晴れ間となった四日には、市中心部の関川沿いで開かれていた商工関係者らによる花見の会場に、尾藤が突然訪問。参加していた尾関に笑顔で歩み寄り、周囲が戸惑う中でがっちりと握手。良好な関係をアピールしてみせた。

 三陣営から熱視線を送られる尾関だが、今回は中立の立場を強調。ただ「三年半お世話になってきた義理がある」として、告示日は現職二陣営の出陣式に出席。元職陣営には出陣式後、事務所に為書きを持って激励に訪れるにとどめた。

 今後の総決起大会なども「強く求められた際は考慮するが、出陣式と同じ行動基準で動くのみ」。市長票をめぐる三つどもえの戦いは、最後までもつれそうだ。

 =敬称略

(統一地方選取材班)