岐阜

「地方議員の存在意義は?」議会知る人に聞きました

2015年4月5日

 4年に一度の統一地方選が始まった。県議、市議などの地方議員は、住民にとって最も身近な地域の自治に関わる存在。ところが、昨年は政務活動費の不適切な使用やセクハラ発言など、不名誉な話題ばかりが目立った。「不要論」すらつぶやかれる中、議会のことをよく知る人たちに聞いてみた。「地方議員の存在意義って、何ですか?」

 (木下大資)

◆権力より市民のために 寺町みどりさん 

 無党派・市民派の女性議員を増やそうと、名古屋や岐阜で講座を開いています。私の考える市民派議員とは、政党に頼らず、市民の利益が何かを判断して政策を実現していく政治家です。

 私が議員になろうと思ったのは、ゴルフ場開発反対などの運動に関わるうちに政治の壁にぶつかったから。市民のために働く議員がいなければ、自分が中に入って変える方が手っ取り早い。法律やデータを根拠にしながら論理的に説得する市民運動の手法を、議会に持ち込みました。

 議員の持つ発言権を行使し問題点を指摘していけば、政策を変えていける。役所の職員だって市民のためにいい仕事をしたいと思ってますから。議会は議決に至るまでの過程で熟議を重ねることに意味がある。議場で発言する時はいつも一人なので会派という数の力を頼むことはありません。

 逆に権力関係に縛られると仕事にならない。地方自治法や議会規則などのルールを「慣例」がねじ曲げている地方議会もあります。都議会のセクハラやじ問題を見ると、多数派の嫌がらせってほとんど一緒だなと思う。講座では、多数派に対抗するためのノウハウも伝えています。

 議会本来のルールにのっとって市民のための仕事をする、当たり前の議員を増やしていきたいですね。

 <てらまち・みどり> 1952年生まれ。91年から旧高富町(現山県市)議員を1期務め、2000年に「女性を議員に 無党派・市民派ネットワーク(む・しネット)」を設立した。山県市在住。

◆現場の声が聞ける強み 大野泰正さん 

 僕自身の経験から言わせてもらうと、地方議員は意外と働いている。ただその舞台裏は、有権者にとって分かりにくい面があると思う。

 公開されている本会議で議員が質問する内容は、当局に通告してあって、そこで何かが決まっていくことはない。大切なのはその前の段階。例えば、当局の担当者と膝詰めで話して、予算案に修正をかける。行政の机上の空論を現場にアジャスト(適合)させるのが議員の役割だから、是々非々の緊張関係の中でやっている。

 現場の声を聞いているのが、議員の一番の強さだと思う。政府が掲げる「地方創生」政策で、今後は地元からいろんな知恵を出してもらうことになる。地方議員の活躍がなければ、その地域は地域間競争に負けてしまう可能性がある。

 日本人ってなかなか意見を言わないでしょ。特に山間地で一生懸命頑張っている人に限って、文句を言わない。そういう人たちの思いをいかに拾い上げていくか。外部の視点を持ったコーディネーターも大切だけど、火付け役はやっぱり、普段から地域に根付いている地方議員じゃないかな。

 はっきり言って国会議員や首長の選挙よりも地方議員の選挙の方が、皆さんの日々の生活に直結している。投票率を見れば住民の本気度が伝わる。ぜひ投票には行ってもらいたいです。

 <おおの・やすただ> 1959年生まれ。2003年から岐阜県議を務め、3期目の13年に参院選に出馬し当選。祖父は衆院議長を務めた故・大野伴睦氏。羽島市在住。

◆まずはちゃんと選ぼう 相川俊英さん 

 地方議員の劣化が進んでいます。全国の議会を取材している僕からすれば、去年話題になった兵庫の「号泣県議」みたいなとんでもない議員は普通にいますよ。

 有権者が無関心なせいで、どんなに不勉強でも議員でいられるわけですから。議員活動という名の集票活動をしている現職ばかりが再選する。のさばらせているのは、有権者一人一人です。

 われわれは議員を評価する眼力を持たないといけない。機会があれば、議会を傍聴してみることをお勧めします。

 ただ、議場で行われている議論の中身はつまらない。何の心構えもなく行ったら間違いなく爆睡します。まずは「議員とはどういう人なのか」と関心を持って見てください。やたら首長をヨイショする人、かみつく人、しゃべりは堂々としているのに中身のない人…。いろんな議員がいます。最初は動物園に行く気持ちでいい。税金という入園料は事前に払っていますから、どうぞ遠慮なく。

 議員の実態にあきれても、「こんなだったら地方議会はいらない」というのは乱暴な議論です。地方自治がしっかりしないと、社会は絶対に良くならない。議会改革より何より簡単なのは、選挙でちゃんとした人を選ぶことです。

 <あいかわ・としひで> 1956年生まれ。地方自治の取材を20年以上続け、週刊誌やテレビの報道番組にも関わる。著書に「トンデモ地方議員の問題」など。東京都在住。