岐阜

熱い訴えも1日限り12選挙区で無投票

2015年4月4日

雨で観光客もまばらな「うだつの上がる町並み」の一角の掲示板には、現職のポスターだけが張られていた=美濃市で

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 過去最多の前回から五つ減ったが、全体の四割強にあたる十二選挙区が無投票だった。告示日に当選を決めたのは、いずれも現職の十五人。内訳は、自民党の公認十二人、推薦一人、民主党は一人、政党の推薦がない無所属が一人だった。

 県議全員に占める無投票当選者の割合は32・61%となり、前回から10ポイントほど低下した。ただ、統一選で行われた道府県議選の平均は過去五回、18%前後で推移しており、全国的に見れば依然高い水準と言える。

 無投票が相次ぐ背景には、自民の歴史的な強さと、「一人区」の多さがある。自民が県内のほぼ全域に強い支持基盤を築く中、全体の三分の二にあたる十八選挙区が定数一。二番手でも落選となる戦いだけに、他の政党や無所属で挑む心理的なハードルは高い。今回も、無投票の十二選挙区のうち十が「一人区」だった。

◆本選7回連続無投票 美濃市選挙区

 また無投票−。自民現職の再選が決まった美濃市選挙区(定数一)は四年ごとの県議選ではこれで七回連続、選挙戦がないことになる。現地を歩くと、人口減が続く地域の危機感がうかがわれた。 

 風情ある木造家屋が並ぶ美濃市の観光地「うだつの上がる町並み」は、朝からの雨で人影はまばらだった。

 その一角で米穀店を営む河合泰明さん(46)は「選挙には必ず行くけど、県議選は記憶にない」と苦笑した。複数の候補者が立ったのは、二〇〇二年の補選を除けば一九八七(昭和六十二)年が最後。河合さんが選挙権を得てから、ずっと無投票が続く。

 だが「選べない不満より、不安が大きい」という。美濃市の人口は県内の市で最も少なく、二万二千人を切った。「もし隣の関市選挙区に合区されたら、美濃市から県議を出せなくなるかも」。県と地元のパイプ役を、現職に期待している。

 ある自治会長(66)も「美濃市は観光でいくしかない。現職は市長とタッグを組んで取り組んでいるが、新人では何もできないだろう」と無投票に理解を示す。保守系同士が争った八七年の選挙を振り返り「小さな町で対抗馬が立つとしこりが残る。できれば避けたい心情がある」とも明かした。美濃インター近くのショッピングセンター。買い物に来た主婦(59)は「選挙戦で気分を変えるのもいいが、他に立候補する人がいないから」。会社員男性(28)は「県議は身近じゃない。誰が出ても同じかな」と話した。

 (木下大資)