岐阜

<ぎふ自治考>(2)女性の社会進出(岐阜市)

2015年3月27日

従業員と笑顔で話す家田里香さん(右から2人目)。女性の負担を知ることが、女性の輝きにつながると信じている=岐阜市で

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 産院のベッド脇には締め切りが迫った書類の山。家田里香(47)=岐阜市=は長男を産んだばかりの二〇〇五年三月、ようやく気付いた。「子育てと仕事の両立なんて簡単だと思っていた。自分が産むまで、私は『男』だった」

 広告代理店勤務を経て一九九六年に無料情報誌を発行する会社を立ち上げた。徹夜なんて当たり前。がむしゃらに働くことに何の違和感も感じなかった。

 ベッドに横になっていると、ふと一人の女性社員の顔が浮かんだ。働きながら二人の子どもを育てるシングルマザー。毎晩、会社に居残る彼女に早く帰るよう声を掛けてはいた。でも…。「もっと寄り添わなきゃいけなかった」。後悔と不安が込み上げた。

 帝国データバンクの調査によると、二〇一四年十二月末時点での、県内の女性社長の割合は4・93%で、五年連続の全国最下位だった。全国平均の7・46%を大きく下回り、一位の青森県(10・14%)の半分にも満たない。

 同岐阜支店の多治見智範支店長(54)は「保守的な土地柄だけに、女性が代表者になることに女性も男性も抵抗があるのかもしれない」と指摘する。

 仕事と家庭を両立する苦労は、経営者に限らない。県議会の女性議員の割合(一三年末時点)も、全国で四十二番目(4・4%)と低い。議員経験のある女性(55)は振り返る。「日帰りで済みそうな視察でも一泊の日程を組みがち」。夕食の準備で一番忙しい午後六時に議員の会合が入るのも日常茶飯事だ。「男って、やっぱり分かってない」

 女性が輝く社会を掲げ、県は四月以降、優れた子育て支援企業への報償金の給付や、経営者の意識改革を目指したセミナーを始める。ただ、子ども・女性政策課の担当者は「社会の意識を変えるのに、特効薬はない」。

 出産後、家田はすぐに社内の改革に乗り出した。保育所が決まるまでの育休延長や学童保育への補助。子どもを持たなかったり、子育てを終えたりした社員が、子育て中の社員が早く帰宅できるよう協力する勤務体系も整えた。

 あれから十年。仕組みは整えたが、満足はしていない。制度をつくるだけでは、子育てと仕事を両立する女性の苦労は伝わらない。「まずは知ることから始めてほしい。性別や年代を問わず、働く女性の負担を分かち合える社会は、きっと誰もが笑顔で力を発揮できるから」 =敬称略

 (宇佐美尚)