岐阜

県議選、1人区多く目立つ無投票

2015年3月20日

写真

 岐阜県議選は従来、他の都道府県と比べて無投票で終わる選挙区が目立つ。四月三日に告示される今回の選挙(定数四六)も、全二十七選挙区のうち半数近い十二選挙区は選挙戦が行われない見通しだ。背景には、自民党の支持基盤の強さと、「一人区」の多さがある。

 元川辺町議長の矢田宗雄さん(64)が立候補の意思を固め、二十年ぶりに選挙戦となる見込みの加茂郡選挙区(定数一)。矢田さんは四年前、自身も出馬した町議選が無投票になった時、住民から不満の声を耳にした。以来「無投票は政治への無関心の原因になる」との思いを抱く。

 対するのは、三期目を目指す自民現職の加藤大博さん(35)。「多額の税金がかかる以上、きちんとした政策論争をして、有権者に選択肢を提示できる選挙戦にしたい」と淡々と受け止める。

 過去五回の統一地方選では、無投票での当選者の比率を示す「無投票当選率」で、岐阜県議選はいずれも全国平均を上回る。今回、無投票の選挙区は二〇一一年から五つ減る見込みだが、それでもほぼ三人に一人が無投票当選となる。

 「岐阜は一人区が多い。幅広い業界団体から支持を集め、組織力で圧倒する自民以外で勝つのは難しく、立候補者が減るのは当然」と分析するのは県内の政界関係者。

 定数一の選挙区は、全体の三分の二にあたる十八。一一年はうち十四が無投票で、当選者全員が県議会の自民会派に入った。岐阜地域の元民主市議は「他の政党には、住民に最も身近な市町村議を増やす活動が足りないのも確か」と嘆く。

 一方、無投票が続く一人区の有権者の思いはさまざまだ。

 一九八七(昭和六十二)年を最後に選挙戦がない美濃市選挙区は、今回も自民現職だけが立候補を予定。市内の男性会社社長(68)は「県議がコロコロ変わると、県とのパイプも細くなる。選挙はやった方がいいが、県との関係を考えると…」。ある町内自治会長の男性(66)は「選挙戦になれば、議員は自分の考えを広く表明することになる。市民として聞いてみたい」と話す。

 (統一地方選取材班)

◆「候補立てない他党も問題」

 朝日大法学部、斎藤康輝教授(憲法) 県内は自民党の支持基盤が強く、伝統や地縁などから争いを好まない傾向もあるため、選挙戦になりにくいのでは。ただ、三十代以下からは「政治を変えたい」という声を聞くことも多い。無投票は有権者が選択できないばかりか、政治的な意思形成が阻害される恐れもある。候補者を立てられない政党にも責任があり、「ふがいなさ」を指摘されても仕方がない。