岐阜

<地方創生 私なら>(5)元多治見市長・西寺雅也さんの提言

2015年3月8日

西寺雅也さん

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 これだけ少子高齢化が進んだ状況では、人口減少に対策を打とうとしても特効薬はありません。出生率が下がっていた十数年前から分かりきっていたこと。「消滅可能性都市」に多治見市が入ってショックを受けた人がいますが、今さら何をというのが正直な感想です。

 統一地方選では、人口減少対策や地方創生の政策を論じるより、地方活性化のアイデアを生む仕組みを考えてみては。議員の役割を見直すきっかけにもなるはずです。

 小学校区ごとの「住民会議」はいかがでしょう。地域で問題だと思うこと、その問題の解決策になりそうなことを住民同士で出し合う。他地域の事例も参考に、自ら政策のアイデアを練るのです。

 こんな会議は、適切に取り仕切る人がいないと進みません。さまざまな意見に耳を傾けることができ、行政の仕組みや他地域の事例も知っている。まさに市町村の議員がうってつけなのです。そして住民はこの役割を担える人かどうかを、選挙で判断すればいい。

 多治見市で市議、市長として働き、研究者として多くの地方を回りました。確かなのは、現場に近ければ近いほど地域の実情と改善のヒントが見えてくるということ。現場からのボトムアップが、地方創生には欠かせません。

 忘れてならないのは、市町村の財政は人口減少でますます縮小するということ。社会福祉に回すお金は高齢化で増え、その分、投資に充てられる予算は増税しない限り減っていく。住民会議も、あれもこれも求めるのでなく「本当に必要なのはこの事業」と言い切る場にする必要がある。

 自民党は二〇〇三年に「次世代育成支援対策推進法」という少子化対策の法律を作りました。しかし状況は変わらなかった。今回の地方創生も看板の掛け替えに見えます。有権者は今だけ良さそうな政策や政治家でなく、三十年先を見すえて投票先を選んでほしい。

 (大島康介) =終わり

 にしでら・まさや 1944年生まれ。名古屋学院大経済学部教授。多治見市議を経て、95年から3期12年、多治見市長を務めた。総合計画を基本にした自治体経営は「多治見モデル」と呼ばれる。著書に「自律自治体の形成」など。多治見市在住。