愛知

<激戦の現場>(3)江南市長選

2015年4月23日

◆保守分裂、難しい選択

沢田和延 60 無新

堀元   69 無現<3>

 =届け出順

 曼陀羅(まんだら)寺のフジの花が有名な江南市。毎年数十万人の観光客が訪れる「江南ふじまつり」が二十三日に開幕するも、市長選と市議選の「ダブル選」が続行中で、市内はそれどころではない。特に保守分裂の一騎打ちとなっている市長選で、市民は難しい判断を迫られている。

 「平穏だった江南市がこんなことになって…」。二十日夜、個人演説会で登壇した堀の言葉に戸惑いがにじんだ。自身の多選を批判して出馬したのが、長年協力してきた与党会派の幹事長である沢田だったからだ。

 堀が批判を受けつつも四選を目指す一番の理由は、建設地選びが難航している尾張北部二市二町(江南、犬山、扶桑、大口)の新ごみ処理施設の建設だ。各演説会場では「江南市での建設決定まで、あと一歩まできた。途中で投げ出すことはできない」と主張。余熱を利用した植物工場を造り、新たな産業を生む構想も掲げる。

 現職らしく「国や県とのパイプ」を強調した戦いを展開。地元選出の自民党衆院議員や県議の支援を受け、二十日には自民党参院議員の片山さつきも応援に入った。

 一方の沢田は出陣式で「新しい江南市を皆さんと一緒につくっていきたい」と呼び掛けた。昨年から市長との対立が目立った市議会の同じ会派の市議選候補者たちも「江南市が停滞しているのは市長の強権的な政治の結果だ」と声を上げ、「多選NO 改革YES」をキャッチフレーズに掲げる。

 昼は街頭での演説を重ね、夜は市議選を戦う候補者の個人演説会を駆け回る日々。住民参加の事業仕分けや市長退職金の大幅カットで財源を生み出し、町づくりや福祉の充実に取り組むと訴える。

 ごみ処理場の市内建設は堀と同じく推進の立場だが、「建設地決定の遅れは近隣市町や地元住民との調整に失敗した堀市長の責任」と指摘。陣営では「堀市長に不満を持っている人は多い」と批判票の取り込みを狙う。

 選挙戦も残すところわずかとなり、互いを知り尽くした両陣営の舌戦は激しさを増す一方だ。市役所内や市議選候補からは「どちらが市長選の勝者になっても、市内にしこりは残る」との声も漏れる。(敬称略)