愛知

<激戦の現場>(1)瀬戸市長選 

2015年4月21日

 統一地方選は後半戦に入り、二十一日には町長選と町村議選も告示される。それぞれの地域で、どんな課題を抱え、何を候補者たちは訴えているのか、激戦の現場を紹介する。

◆オール与党体制から一転

須崎 徳之 33 無新

伊藤 保徳 68 無新

川本 雅之 49 無新

早川 幸介 60 無新

 =届け出順

 「政治は王道を歩かないといけない。彼は若く、政治的に全くの無地、真っ白。ゆえにみんなでつくるリーダーなのです」。十九日の須崎の出陣式。小雨の降る中で、引退する現職市長の増岡錦也が語気を強めた。

 瀬戸市長選では、共産以外の政党が特定候補に相乗りする「オール与党体制」の選挙が長年続き、四期を務めた増岡の選挙でもすべて自民、民主両党が推薦した。しかし、今回は民主が伊藤の推薦に回り、一転して自民と民主がぶつかる選挙になった。

 増岡は明確な後継指名こそしていないが、商工団体を基盤とする後援会が須崎を支援し、取り付けた企業・団体推薦は二百以上。自民推薦を受け、地元選出の衆院議員や県議もバックアップし、組織選挙を展開。須崎自身も「先輩方が築き上げた瀬戸を、今度は僕らが引き継ぐ」と、実質的な後継者であることを意識する。

 地元有力企業の相談役を務める伊藤は前回の市長選で、増岡にわずか百八十一票差で落選。以来四年間、「新しい瀬戸づくり」を掲げ、地域で草の根運動を続けてきた。伊藤ももともと自民党員だが、幅広い支援を受けようと今年二月に離党し、民主の推薦を得た。

 二十日早朝、名鉄新瀬戸駅の改札前。伊藤は昨年十二月の衆院選小選挙区で自民候補を破った民主の山尾志桜里とともに「瀬戸を変えるため、皆さんの力を貸してください」と呼び掛けた。伊藤の推薦について、山尾は「女性幹部の積極登用などの公約で考えが一致した。経験と力量もある」と説明する。

 市議五期を務めた川本も、市議会では自民系会派に所属。父明良(故人)は県議を六期務め、副議長も歴任した地元自民の重鎮だった。党瀬戸支部が二月、市議一期目の須崎を支援することを決めたことで、離党して出馬することを決意した。

 出陣式では「私には会社のバックアップも政党の推薦もない」と強調。市議五期の政治経験を武器に自らを「即戦力」と売り込み、他候補との差別化を図る。「父の四十年間と自分の二十年間で培った人脈が全て」と話し、個別に支援を呼び掛ける「どぶ板選挙」に活路を見いだす。

 元市議の早川は、政党のしがらみがないことを強みに、学校給食費の無料化や市職員の給与削減など大胆な公約を掲げる。「公約で勝負」と独自の戦いを展開し、「他候補は全員、現職路線の継承者」と批判する。

(文中敬称略)