愛知

美浜町長選を前にどう賄う下水道整備

2015年4月18日

土手から突き出た管から生活排水が川へと流れ込む=美浜町野間で

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 二十一日告示の美浜町長選。いずれも無所属の現職山下治夫氏(58)と元町会計管理者の神谷信行氏(61)が、立候補を表明している。選挙戦では、町内で調査が進んでいる「公共下水道の整備計画」が争点となりそうだ。人口が減少する町で、各世帯戸別の浄化槽をやめて、下水道整備に巨費を投入するか否か。県内で公共下水道のない自治体は、美浜町を含め五町村。住民から「分かりにくい」との声も聞かれる計画をみた。

 整備計画は、市街化区域を中心に二〇一八年度から、町民の八割近い一万七千四百十九人の処理を予定する。一七年度に着工し、東部から順番に工事を進め、対象区域の東西二カ所に終末処理施設を設ける。

 工事費百六十四億円に完成後の維持管理費を含め、着工から四十一年間で二百三十三億七千万円を見込む。国や県の補助金で百十億八千八百万円をまかない、九十一億七千七百万円は使用料収入を充てるなどして、町負担分は十五億九千万円となる試算だが、一般会計七十億円規模の町には重い負担だ。

 さらに、加入者が少なければ使用料収入は減る。町都市計画課は整備完了五年後の加入率は80%と推測する。隣の武豊町の下水道は、県管理の終末処理場(半田市)に接続している。一三年度の加入率は79・6%で美浜町の推測とほぼ同じ。

 だが、武豊町では「跡取りがいない」、「お金がない」などと、下水道への接続をためらう高齢者世帯が少なくないという。担当者は「未加入でも罰則はないので、お願いしかできない」と話す。

 武豊町の一四年四月一日現在の高齢化率は22・5%。美浜町は一五年三月末現在で27・3%と武豊町より高く、加入率に影響する懸念がある。美浜町はこうした事態を見越して、二十万〜七十万円とされる下水道への接続工事費の半分を補助するというが、効果のほどは未知数だ。

 管の敷設工事も費用が膨らむ恐れがある。他の自治体担当者は「地中に何か埋まっていれば管がぶつからないように深く掘る必要がある。工事費は増えることはあっても減ることはない」と語る。

 美浜町が下水道整備を急ぐ背景には、国が昨年一月、十年程度を目安に、下水道、浄化槽設備の整備を進めるよう求めた通知がある。町の担当者は「十年を過ぎれば、国の補助金は設備の老朽化対策や更新に振り向けられるだろう。今決断しないと下水道整備はできない」と強調する。

 ただ、施設が完成すれば後戻りはできない。岐阜大の富樫幸一教授(水資源問題)は「岐阜県内では下水道整備がかなりの負担になり、合併できなくなった町の事例もある。将来的に人口減少はより大きくなるため、利用料金も上がりかねない」と警鐘を鳴らしている。

 (沢井秀之)