愛知

<熱狂冷めて なごや市議選>(下)共産躍進したけれど…

2015年4月17日

若者の関心を高めようと知恵を絞る候補もいたが、投票率は過去最低を更新した=中区栄で

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 選挙に派手なオープンカー。それも、労働者に寄り添う共産党が−。

 奇妙な取り合わせにも映る。名古屋市議選の共産候補、西山あさみ(25)は、意外性たっぷりの選挙戦を展開し、初当選を飾った。

 投票日前日の土曜日、買い物客らでにぎわう栄の繁華街。オープンカーを四時間近く走らせ、目立つ水色のコート姿で助手席から手を振った。

 二〇一三年の参院選で、党の選挙を手伝ったとき、同世代の仲間と思い付いたアイデアだ。「最初は『えっ』というところから関心を引き、若者に訴えかける選挙運動をできないかなって」。会員制交流サイト「フェイスブック」も活用し、街頭の演説風景を日々発信。多い日は十回近く更新した。

 昨年十二月の衆院選で躍進した共産は、市議選で過去最多の十二議席を獲得。改選前の五議席を倍増させ、第三党に並んだ。

 だが、躍進は新たな支持層を開拓したから−とも言いきれない。

 西山が当選した中区は定数三に九人が林立する競争率三倍の「超狭き門」。投票率は十六区最低の28・69%。その結果、全十六区の計百三十六候補のうち百六位、千六百二十六票の得票で滑り込んだ。票の分散と低投票率が相まった選挙区事情が、固い支持層がいる共産に有利に働いた。

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 だからこそ、西山は自分に言い聞かせる。「政治に関心がない同世代の若者に、もっともっとアピールしていかなければ」

 対照的だったのが維新。衆院選では東海三県で四人が当選した。その勢いに乗り、市内の足場固めをもくろんだが一勝十四敗。「風も吹かなかったし、党の看板『身を切る改革』が減税日本の訴えに埋もれた」。陣営からは、そんなぼやきも漏れた。

 候補者の数は、市民の関心が高かった出直し選の百三十八人とほぼ同じ。「ボランティア議員」による政治を標榜(ひょうぼう)する河村たかし市長の減税日本の出現の影響が、なお続いているからか。一方で、投票率は過去最低を更新している。

 「前回、減税に入れた多くの人が棄権した。不祥事がたくさんあって、やむを得ん…」

 開票日翌日の記者会見。河村市長は自身の責任を認め、複雑な表情を浮かべた。

 市議会解散請求(リコール)の署名運動に参加した名東区の七十代男性は今回、四年前に続いて減税候補に投票した。「これが最後だ」との思いで。一方、中区の四十代の飲食店経営者は棄権。幼稚園児を女手一つで育てているが「政治への期待が一時的に高まることはあっても、結局、身の回りの生活はよくならない」と話す。

 四年前の熱狂がうそのように静かだった市議選。市民の思いが映し出されたとも言えるが、今後の市政のチェックは、六割以上の民意が反映されていない市議会に委ねられた。

 =敬称略

 (この連載は、北村剛史、丸田稔之が担当しました)