愛知

<政争の行方 江南市長選を前に>(上)新ごみ処理施設

2015年4月16日

うっそうと木が生い茂る江南市中般若町北浦。候補地となって2年2カ月たつが、いまだに建設は決まっていない

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 十九日告示、二十六日投開票の江南市長選は、四選を目指す現職堀元さん(69)と市議の沢田和延さん(60)による一騎打ちが予想される。二人は市長と保守系議員として長年協力して市政を進めてきたが、次第に対立を深めてきた。三期の実績を基に市の発展を目指そうとする堀さんと、多選を批判して改革を唱える沢田さん。市を二分する政争は日増しに熱を帯びている。

 それは、突然の出馬表明だった。

 昨年の九月議会の一般質問。市長の堀は自ら発言を求めてこう言った。「新ごみ処理場問題を途中で投げ出すような無責任なことは私にはできない。来年の統一選に出馬し、責任を全うしたい」

 質問者として登壇していたのが沢田。建設地決定の遅れを市に問いただしていた途中だった。

 沢田は「堀降ろし」を画策していた保守系最大会派の一員で、市長選に出馬するのではないかとのうわさが出ていた。堀が先手を打つ形で四選への出馬を宣言したことで、保守分裂は決定的となり、戦いの幕は開けた。

 当時から尾張北部二市二町(江南、犬山、扶桑、大口)が計画している新ごみ処理施設の建設地決定は、停滞していた。

 江南市は同市中般若町の候補地を、市内の地元三地区と隣接する扶桑町の三地区の同意を得た上で正式な建設地にすることを目指してきた。だが市内三地区は同意したものの、扶桑町小淵地区は住民の六割が建設に反対。期限とした九月末までの同意に、めどは立たない状態だった。

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 それから七カ月たった今月十三日。堀と沢田は、再びごみ処理施設をめぐって相対した。市長選前の公開討論会で、それぞれが出馬しようとする理由の説明で言及した。

 堀は「この問題に市議時代から携わり、あと一歩まできている。地方創生とごみ処理施設との連動は、国に多数の人脈のある私にしかできない」と強調。沢田は、堀の問題点として「近隣首長や住民との調整がうまくいかず、期限までにごみ処理建設地を決められなかったのは市長のミス」と断じた。

 そんな二人を、建設候補地である中般若町のある住民は「結局どちらも推進派でしょ」と冷めた目で見る。

 現在のごみ処理施設は、老朽化で年間三億円の修理費がかかる上、新しい施設の建設地が決まっても稼働するまでには環境アセスメントと建設工事で数年は要する。

 一見対立する二人だが、一刻も早く地元の同意を得て、建て替える必要があるという認識は同じだ。建設地は江南市の候補地しかないという点でも共通している。新しいごみ処理施設の余熱をいかに再利用するかなどの地域振興策をめぐっては、そもそも二人の議論がかみ合わない。

 環境・農業分野での新産業誘致を選挙で訴える堀は、植物工場を併設して産業振興に役立てる構想を掲げる。一方の沢田は余熱利用には積極的ながら「他の自治体や住民と協議して進めるべき話だ」と、市長選では具体的な案を示すのを控える。

 二人の出馬に大きな影響を与えたごみ処理場建設問題は「市の最重点事業」だが、市のある職員は「今回の争点にはならないだろう」と冷静に見据える。

(この連載は、井上峻輔が担当します。文中敬称略)

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