愛知

<熱狂冷めて なごや市議選>(中)既成政党、勢力を回復

2015年4月16日

市議会第1党の座を固めた自民。2年後の市長選も見据える=4日、千種区で

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 市議選の火ぶたが切られた今月三日。自民の新人候補の出発式は、事務所の外まで支援者があふれていた。

 だが、実際のところ陣営は手応えをつかみかねていた。昨秋からあいさつ回りを重ねたが、冷たくあしらわれることもしばしば。「破られた名刺は数知れない。壁は厚い」。現職議員たちが築いた強固な地盤に割って入る難しさを、肌で感じていた。

 今回、自民は二十二人が当選。改選前から四議席増やしたものの、八年前の二十三議席には届かない。二人を擁立した十選挙区では、新人五人のうち四人が敗退した。ベテラン議員はつぶやく。「票は自分の力で開拓するしかない。それで、党も議員も強くなる」

 民主も、前回選挙で減税に押し出された元職の返り咲きなどで五議席増やしたが、最大会派を誇ったころの勢いには及ばない。公明は十二議席と現状維持に努めた。

 既成政党三党の議席を合わせると、改選前の四十一から五十となり、市議会の三分の二を押さえたことになる。条例案や予算案への議会の判断を、市長が拒否権にあたる「再議」にかけても、再可決できる数字だ。

 実際、河村たかし市長肝いりで実現した市民税減税や、議員報酬半減の継続に、懐疑的な声も漏れ始めている。

 とはいえ、三党の足並みがそろっているわけではない。

 「河村人気は根強い。国政もあり、すべての面で自民と手を組むわけではない」と民主のベテランは明かす。

 減税日本は十二議席を得て、一定勢力を保つ。市長のお膝元である衆院愛知1区の東区では民主候補を圧倒し、西区でも得票は公明候補を上回る。緑区では二議席を確保した。

 公明の中堅も「今までも是々非々でやってきた。市長への姿勢が急に変わるわけではない」と話す。

 勝ち抜いた議員たちが見据えているのは、二年後の市長選だ。河村市長と再び相まみえるかもしれない。「候補者を探し始めないといけない」。自民の有力議員はささやく。

 二〇一三年の前回市長選で、対抗馬として戦った自民の藤沢忠将(45)は「子どもでも、市長の名前を知っていた。異次元の選挙だった」と振り返る。三党の思惑が交錯し、対抗馬探しは難航した。市議五期目だった藤沢が推されたのは、選挙のわずか一カ月半前だった。

 市長にその頃の勢いはないものの、自民や民主も今回の選挙で勢力拡大を示したとは言い難い。六選を果たし、再び市議会に戻る藤沢は二年後に向け、言った。「一年前に対抗馬を決め、他党と連携すれば、いい勝負に持っていけるはずだが…」

 =敬称略